「現代人なら誰もが抱える『自分はどう思われてるんだろう』という感覚。そんな身近なテーマをはらんだ原作だからこそ映画にしたかった」『どん底作家の人生に幸あれ!』アーマンド・イアヌッチ監督インタビュー
NeoL / 2021年1月11日 17時0分
イギリスの文豪ディケンズの代表作「デイヴィッド・コパフィールド」を『スターリンの葬送狂騒曲』の鬼才アーマンド・イアヌッチ監督が映画化した『どん底作家の人生に幸あれ!』が1月22日(金)に公開となる。ディケンズの長年の大ファンでもある、アーマンド・イアヌッチ監督は「なるべく多彩なキャストにしたかった」とキャスティングにこだわり、主演に『LION/ライオン~25年目のただいま~』『ホテル・ムンバイ』のデヴ・パテル、彼の人生を彩る人々にティルダ・スウィントン、ベン・ウィショー、ヒュー・ローリー、ピーター・キャパルディなどを迎えた。幼少期から困難な人生を送りながらも自分の道を見つけ、手助けしてくれた人々と成功を共有した主人公の生き様をユーモアを持って描いた本作は、自分が取るに足らない存在に思え、不安を抱えて生きる人々にとっての活力となるのではないだろうか。
ーープロデューサー、監督・脚本 として本作に関われていますが、イギリスの国民的作家チャールズ・ディケンズの代表作で自伝的側面のある原作小説を描くにあたり、気をつけたことは何でしたか?
アーマンド監督「僕はこの映画の観客がたとえチャールズ・ディケンズのことを聞いたこともなく、原作である小説「デイヴィッド・コパフィールド」についての知識もなく、僕の過去の作品について何も知らなくても構わないと思っています。僕はこの原作が大好きで、そこから放たれるバイタリティーやエネルギーそして現代的な要素とユーモアが大好きなのでそれを映画の中に組み入れたかったのです。それにキャストのアンサンブルが加わって楽しい作品にしようと思いました。
この映画はお互いに火花を散らしあいながら物語が進行していきます。過去のコスチュームプレイのルールには従わないことにしました。劇中の登場人物たちは、現代に生きている人たちと同じ。蜘蛛の巣だらけでカビ臭くて暗い過去の歴史や時代に戻る必要はないと考えたのです。そこが僕の意図したアプローチでした」
ーー映画化するにあたり、どんなメッセージを込めたのでしょうか。
アーマンド監督「原作が訴えかけていたのが、デイヴィッドが自分は何者なのかと悩み、運命の浮き沈みのなかで、いろいろな人からいろいろな呼び方をされ、居場所を見つけられずにいる状態から、執筆活動を通して自尊心を見出すまでの過程でした」
ーーそれを監督は“ステータス不安”と呼んでいますね。
アーマンド監督「そうです。ちなみにそれって、現代人なら誰もが抱える『自分はどう思われてるんだろう。これでいいのかな?』という感覚ですよね。特にイギリスでは、育ちや出身校といったことが、いまだに問われる傾向があります。そんな身近なテーマをはらんだ原作だからこそ映画にしたかったんです」
ーー今回、特にチャレンジングだった点は?
アーマンド監督「この原作は大作で、一番苦労したのは脚本にする時でしたね。前半、中盤、後半という形で構成されている大作を作るには注意が必要でした。他の人気作品のように山場となる場面だけを切り取って並べ替えていくことは出来ないので、視点の違う箇所を切り捨てることにしました。
一方では、物語に流れているクリエイティブな精神性は維持したまま、陽気で愉快な感情を失わないことが大切でした。それを2時間の映画作品にしなくてはならなかった。900ページもの長編大作を忠実に再現するのとは違う作業でした。そこが一番大変だったかもしれないですね。だから面白い登場人物がいても面白いシーンがあってもカットしなければならなかった。そこが一番苦労したところでした。
撮影現場では俳優陣とは2週間に渡るリハーサルをやって理解を深めていき、みんなの士気も高まり、親密な関係を築いていくことができました。この映画で大切なことは友好関係とそのコミュニティなので、それを撮影現場でも作り上げていったわけです」
ーー主人公デイヴィッド・コパフィールドを演じたデヴ・パテルとの仕事はどうでしたか?
アーマンド監督「デイヴィッド・コパフィールド役をできる人は彼以外にはいないと思ったし、彼を見て直感的に自分が求めている人だとわかりました。デヴ・パテルには主人公デイヴィッド・コパフィールドを演じることができる素質が兼ね備わっていたんです。脆弱性があり、コメディーのセンスがあって、身体的特徴も一致していて、しかもロマンティックでカリスマ性と強さを持っています。彼を見た時、映画『LION/ライオン~25年目のただいま~』(16年)のことを思い出しました。強くて光る個性を持っている。それがデヴ・パテルでした」
『どん底作家の人生に幸あれ!』
2021年1月22日(金)TOHO シネマズ シャンテ、シネマカリテ 他全国順次公開
★公式サイト:gaga.ne.jp/donzokosakka
監督:アーマンド・イアヌッチ『スターリンの葬送狂騒曲』
原作:「デイヴィッド・コパフィールド」チャールズ・ディケンズ著(新潮文庫刊、岩波文庫刊)
出演:デヴ・パテル『LION/ライオン ~25年目のただいま~』/ピーター・キャパルディ『パディントン』
ヒュー・ローリー『トゥモローランド』/ティルダ・スウィントン『サスペリア』
ベン・ウィショー『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
原題:The Personal History of David Copperfield
【2019 年/イギリス・アメリカ/シネスコ/5.1ch デジタル/120 分/字幕翻訳:松浦美奈】 配給:ギャガ
(c)2019 Dickensian Pictures, LLC and Channel Four Television Corporation
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