シリア政府は本当に化学兵器を使ったのか
ニューズウィーク日本版 / 2013年9月5日 13時52分
内戦状態が2年以上も続くシリアで先週、アサド政権側から放たれたとされるミサイルが首都ダマスカス近郊のゴウタに着弾した。化学兵器とみられる爆弾はガスを吐き出し、スンニ派の反体制派が支配する同地域で数百人規模の死亡者が出た、と報じられている。
現場の惨状は、シリアの反体制派が撮影した映像で世界中に拡散された。病院でけいれんする女性と子供、口や鼻から泡を吹く男性......。今回の攻撃が大きく報じられているのは、被害者の多さ故という面もある。
ただ化学兵器は本当に使われているのかといぶかしむ声もある。ジャーナリストが誘拐や殺害されるなど報道が制限されるなかで、メディアは現地にいる反体制派の活動家、または人権団体の情報に頼らざるを得ない。そうした状況が、化学兵器の使用に対する疑念を生んでいる。
そもそも私たちが目にする映像は、どこまで現場の全体像を伝えているのか。反体制派が政府を非難するための偏った情報だけを出し、被害を大げさに発表しているとみる向きもある。現在シリアにいる国連調査団のオーケ・セルストロム団長は、反体制派が主張する1300人の死者数は「疑わしい」と語り、いまメディアなどで出回っている映像を見た限りでは死傷者数が多過ぎると指摘する。
メディアも、化学兵器使用について事実関係の裏付けはできないでいる。いつどこで撮られたのかも分からない。結局、過去に反体制派から出された映像などと同様、大手メディアは必ず「独自で事実関係は確認できない」という一文を加えて、今回も映像を報じている。
反体制派がサリン使用か
欧米の医療専門家の間では化学兵器使用について、「治療に当たる医療関係者の対応が不自然」「サリンによる攻撃だ」といったコメントが飛び交っている。ただ犠牲者が出ているのは確かだろう。
現在、化学兵器使用疑惑を調べる目的で国連調査団がシリア入りしているが、攻撃を受けたとされる地域に彼らが入ることはアサド政権が許可しない。結局、化学兵器が使われたのかどうかは判然としないままだ。
今回の攻撃のタイミングに首をかしげる専門家もいる。シリアにいる国連調査団は、攻撃の3日前に入国していたからだ。国連のイラク大量破壊兵器査察委員長を務めたロルフ・エケウスは、「国際的な調査団が国内にいるときに、シリア政府がこんな攻撃するのは奇妙だ」と、疑問を投げ掛ける。もちろんアサド政権がそれを逆手に取って攻撃を行った可能性もある。
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