2020年東京オリンピック、「ブランドと知的所有権」の問題は大丈夫か? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年9月19日 13時13分
例えばですが、2020年の7~8月には、東京に多くの観光客が海外から来るわけで、当然ですが、これを機会に「東北ツアー」を組んで東北の経済に役立てたいという思いは大きいわけです。ですが、「あらゆる便乗商法はダメ」だということで杓子定規な対応になるようですと、東京五輪の効果を東北に波及させることも難しくなります。
勿論、日本は知的所有権というものに関しては、しっかりした法制とリーガルマインドという「制度のインフラ」を整備して、むしろコンテンツやソフトを輸出しようという国です。ですから、この問題をいい加減にすべきではありません。ですが、その一方で「不自然な規制」により経済効果が萎縮するようでは大変です。この問題は時間をかけてキメ細かく考えていくべきで、今から本気で取り組むべきと思います。
もう一つ気になるのは、IOCの「ワールドワイド・パートナー」やJOCの「ゴールド/オフィシャル・パートナー」の存在です。現時点でオリンピック競技全体については、全世界におけるパートナー(スポンサー)シップの権利を保有する10社が「最高の権利」を保有しています。また、JOCとしては独自に日本国内のスポンサーと契約しているわけです。
彼等は、高額のスポンサー料を払っているわけで、その見返りに様々な「独占権」を得ているわけです。勿論、通常の商業活動であればカネを出している以上は「独占権」を得るのは当然であり、よく説明をすれば世論も納得すると思います。プロスポーツの世界では、かなり定着していると言えます。
ですが、オリンピックというのは「国家的行事」あるいは「国民的行事」だというイメージが強いわけで、その点ではサッカーのワールド・カップなどとは「格」が違うわけです。その一方で、今回の東京というのは「広域都市圏」としてはおそらく世界でもトップクラスの購買力を持っているのは間違いなく、その点で国内のスポンサーも海外のスポンサーも「オリンピックの経済効果を独占したい」という期待感は強いと思います。そこでスポンサーが「独占権を過度に主張する」ということには、世論一般には違和感を生じる危険があります。
例えば、現在のIOCの「ワールドワイド・パートナー」には、アメリカの炭酸飲料メーカーとハンバーガーチェーンが入っているわけです。現在世界では日本食のブームが続いており、日本の緑茶もブームです。ですが、会場の周辺での「独占権」をこの2社が過度に主張するようですと、せっかくオリンピック観戦のために東京に来た世界からの「お客さま」に対して、冷たい緑茶や健康的な日本食で「おもてなし」をしようとしても、制約がかかる可能性もあるわけです。
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