『あまちゃん』とJR北海道、そして過疎・高齢化を考える - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年9月26日 14時32分
ちなみに、この「鈴木のばっぱ」を演じているのは大方斐紗子さんといって、福島県出身の女優であり、同時にジャズやシャンソンでも「知る人ぞ知る」実力派の歌い手さんだそうです。そうしたキャスティングも含めて、訓覇圭、菓子浩の両プロデューサーには「全く油断もスキもない」としか言いようがありません。
そうは言っても、日本の過疎・高齢化というのは深刻です。この問題に関して、例えば総務省は「定住自立圏」という構想を進めています。簡単に言えば、自立できない過疎地は中核都市との連携を強め、広域圏として医療サービスや買い物の利便性は一体として守っていくという体制づくりです。過疎地だけでは「やっていけない」中での苦肉の策ですが、進める方向はこれしかないのでしょう。
この過疎・高齢化の問題については、企業経営者でブロガーの山本一郎氏がブログでJR北海道の一連のトラブルに関連付けて述べています。ここ数週間、車両整備の問題に加えて保線工事の遅れなど多くの問題が明るみに出たJR北海道については、私はこの欄で「2年続きの厳冬に見舞われるなど鉄道事業者として過酷な条件を背負っている」ことへの理解を訴えました。一方で、山本氏の方は「JR北海道の一連の事故は『過疎化し衰退する地方』の一里塚」であるとして、相当に辛口な論を展開しています。
山本氏は「JR北海道というのはそもそも無理難題の象徴であり、乗降客が一日100人未満の駅もそこらじゅうにあるという修羅のような赤字の世界」という認識をベースに「『じゃあ車でいいじゃん』とはならないのがまた地方の泣けるところ」だと理解を示しながらも、JR北海道の今後に対しては、「もはや誰かが『ない袖は振れない』と言うしかない」という厳しいコメントを突きつけています。私はこの点に関して同意はしませんが、表面的なバッシングとは違う厳しい視点は受け止めないといけない、そう感じたのも事実です。
上記の総務省の「定住自立圏構想」についても、山本氏は「これはこれで必要なこと」としつつ「ただ、誰も幸せにならないぞということが文字になって出てきたというだけ」と辛口です。では、山本氏はいわゆる「東京にもっと集中させて国際都市として生き残りを」というような安易な合理化論者であるかというと、そうではなく、「(過疎・高齢化と人口減と一極集中に関しては)もう少しうまい着地を勝ち組こそが手がけていかないと、本当に全体が沈んでしまうんじゃないかという危機感」を持つべきだとしています。この点に関しては、私もそう思います。
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