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2020年東京オリンピック、問題山積の公共交通機関 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2013年10月1日 11時37分

 この中で、埼京線と湘南新宿ラインは当面は山手線と並走しているが、そっちのほうが速達性があるとか、湘南新宿ラインは中距離だとか、同じ中央線でも近距離と中長距離とは別だとかいうような「重要な情報」は完全に欠落しています。勿論、限りあるアナウンスの中にそうした要素を全部詰め込むことは不可能です。ですが、線名に関してはもう少し整理ができるのではないでしょうか。

 例えば、線名をカラーで表示するということが考えられます。そのカラーですが、今でも地下鉄はやっているし、JRの中では中央線快速がオレンジだとか、京浜東北がブルーというようなイメージカラーがあるわけです。ですが、地下鉄、JR、私鉄を通して一貫した「色分け」というのはできていません。また近距離と中距離のカテゴリの違いも分かるようにすべきでしょう。

 ちなみに、優等列車の名称も各社バラバラで、特急の上に快特があったり、準急の下に区間準急があったり、全くチンプンカンプンです。勿論、停車パターンを細かく変えているのは、距離に応じた乗客の分散を図る上で必要なのですが、名称の統一ぐらいできないでしょうか?

 駅名、線名と並んで大変なのが運賃体系と、出札、改札の問題です。まず運賃の問題については、世界の主要都市の中でここまで複雑なのは珍しいと思います。とにかく、JR、東京メトロに都営地下鉄、そして私鉄各社と細かく経営主体が分かれており、それぞれに運賃体系があり、一部に乗り継ぎの割引があるものの、基本的には経営主体の違う線に乗り換えると運賃は足し算式になっていくばかりか、乗り継ぎ切符の購入は不便、しかも2社から3社に乗り入れて直通運転をしている場合もザラにあるというのですから、初心者にはチンプンカンプンでしょう。

 私は、この際ですから東京オリンピックの開催期間は「23区内」は均一料金にしてはどうかと思います。そうなると、既存の定期券客との問題や、圏外との乗り継ぎ運賃の整合性など複雑な問題が発生しますが、例えば成田と羽田と関空だけででも「東京五輪観戦者、参加者用の均一料金切符」を販売して、外国からのお客さんが混乱しないようにしてはどうかと思うのです。

 その他にも、バスと電車の通しの料金を設定するのか(広域の均一料金に入れるのか)? 会場エリアの交通網について一般車両の乗り入れを禁止する代わりに、連結型のハイブリッドバスなどを導入してはどうか、など色々と気になる問題があります。そもそも、「満員電車」というのをカルチャーとして受け付けない外国人に対して、どれだけの輸送力を確保するのかというシミュレーションもしっかり行う必要があるでしょう。

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