メジャー日本人選手への応援スタイル、そろそろ修正の時期では? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年10月3日 13時31分
更にひどかったのはシーズンの終わり方でした。ダルビッシュ投手は最終の162試合目のエンゼルス戦に先発して好投してチームを勝利に導き(勝ち星はつかず)、翌日の「ワンゲーム・プレーオフ」でレイズと対戦することになりました。ですが、そこまで7連勝のレンジャースはレイズに負けて「今年は終戦」になってしまったのです。
それにも関わらず、日本のメディアはシーズンが終了したことで「ダルビッシュ投手のアメリカンリーグの奪三振王が確定した」と大喜びをしていました。これはアスリートには本当に残酷です。1年間、大変な苦労をして優勝を目指してきたのに、それが断たれたという選手の悔しさを全く無視して「記録」に喜ぶ、このズレの激しさには改めて強い違和感を覚えます。
仮に後半戦のダルビッシュ投手が精神的な疲労を蓄積していったとして、その原因はチームメイトとの誤解だけではないと思います。日本で応援してくれているファンと勝つ喜びや負けた悔しさを共有したくても、間に入ったメディアが妨害してしまうという点がストレスになっていったのでは、私にはそう思えてなりません。
これは根の深い問題です。シーズン200本安打の束縛を受けていた中で自然なチームプレーを妨害され、チームメイトやシアトルの野球ファンとの関係でも疲労を溜め込んだイチロー選手などは、その最大の被害者だと言えるでしょう。
神がかり的な活躍でレッドソックスを地区優勝に導いた上原浩治選手にしても、胴上げ投手になるなどシーズンの最後まで好投を続けましたが、連続無失点記録が途切れて以降は日本での報道は明らかにトーンダウンしていました。
では、どうして日本の野球ファンは「日本国内のアマチュア野球やプロ野球ではチームプレー優先のカルチャーを強く支持」しているにも関わらず、日本人のメジャー選手には「チームの勝敗よりも、個人成績」を要求するのでしょうか?
それは「自分たちの身内である日本人選手がアメリカに渡ってメジャーで活躍すること」とは「居並ぶ外国人選手の中で彼等を負かすような個人記録を打ち立てる」ことだ、そのような狭い意味での「活躍」にしか興味がない、少なくとも日本のメディアはそう思って報道しているように見えます。
この傾向は実はずっとそうだったのかというと、必ずしもそうではないように思います。松井秀喜氏のヤンキース入りの頃は、チームメイトのジーターやバーニーは日本では結構人気があったように思いますし、イチロー選手の初年度の活躍はマルティネスやブーンといった同僚、あるいはピネラ監督の存在などとも一緒に記憶されているのではないかと思います。日本の野球ファンが心の底から「日本人選手の個人記録にしか興味がない」わけではないのです。
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