大学入試への「面接導入」、本当に可能なのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年10月8日 10時55分
この際、例えばですが「枠」を設けて多様な人材を集めるというのはどうでしょう? まず、各面接官にそれぞれ「自分の裁量で採用できる枠」を与えるのです。その面接官の人選も、学部や専攻を広くバラつかせるだけでなく、国際派枠と国内派枠、その国際枠でも欧米派枠とアジア派、環境枠と経済成長枠、人権枠と統治志向枠などという色分けもしてバランスを取る必要があります。
合格枠の設定として、では「社会的な意見のある学生」が良いのかというと、必ずしもそうではないわけで、そのようなイデオロギー志向枠と無色透明枠、その無色透明枠についても確信犯的ノンポリ枠と成長スピードの問題で「まだ何も考えてません」枠などを分けて取る必要もあると思います。コミュニケーションのスタイルでも「練達枠」と「朴訥枠」などとハッキリ「枠」を分けてそれぞれに一定数を取るのです。
つまり、面接官のセンセイ方に対しては、例えば「環境問題が自分のライフワーク」だというAセンセイには、その自分の思いを託せるような人材を探すことに専念してもらうのです。それとは全く別に「成長なくして社会の安定なし」という経済合理性のBセンセイは、その後継者候補的な資質を探すようにするのです。また定員の少ない「世界のある地域の文学」などを専攻しているセンセイには、その専攻の枠に想定される学生を選ぶ権利を与えるなど、枠をバラバラ細かくするのです。
そうすれば、限られた合格枠を、環境のAセンセイと経済成長のBセンセイが奪い合って「合否判定の場がイデオロギー闘争になる」という事態になるのを回避することができます。また「どうせ文学部のCセンセイは作家志望に甘い」などという批判も避けられます。元々ABCの各センセイ方は「違う枠」を持っているからという考え方だからです。
勿論、この議論は60%はジョークとして申し上げています。ですが、40%ぐらいは、そのぐらいしないと日本の学界における価値の多様性を考えた時に面接として機能しないと思うのです。価値の多様性はまだ良いのです。「元気でグローバルな世界を目指す」学生ばかりを集めて「沈思黙考」型のキラリと光る人材を見落とすということでは人材育成上のロスは計り知れないわけで、そうした点を考えるとこうした「枠」制度というのは真剣に考えたほうが良いと思います。
この「枠」の中には「リケジョ(理系女子)枠」などはシッカリ確保しておく必要があると思いますが、その場合も「周囲の理解とともに育ったリケジョ」と「周囲と戦ってきたリケジョ」の双方をバランスよく採用するなどという工夫も必要でしょう。どちらも現在の学界では必要な資質だと思われるからです。ちなみに「理系はやっぱり男子」というような百害あって一利なしの価値観の持ち主は「男女共に100%排除」で良いでしょう。いくら伝統価値枠的なものを設けるにしても、この種の人材に育成のコストを投じる余裕はないと思いますし、社会へのメッセージ発信という意味でもそうすべきと思います。
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