「国際成人力調査」日本トップは喜べるのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年10月15日 10時58分
一方で、英語による問題解決力やコミュニケーション力を備えた国際的なエリートを育成したり、東京に特区を設けて外国企業を誘致したり「国際人や国際的な企業によるリッチなエコノミー」を育てようという動きもあります。こうした動きばかりが脚光を浴びるということは、逆に「分厚く優秀な中間層」には将来はないということになりかねません。国策ないし、国の運命がそちらに向かうのであれば、今回の「成人力で世界1位」などというニュースは何とも虚しいことになります。
どうしたら良いのでしょうか? 少子化は問題視されていますが、仮に2014年以降に劇的に出生数が増えてもその増加人口が18歳になるのは2032年以降であり、それまでは18歳以上65歳未満の人口減少トレンドは確定しているわけで、その間にどんどん国内の市場規模は細っていくわけです。
そんな中で「中間層のスキル」を活かす経済というのは、どんなイメージが描けるのでしょうか? 1つの方向性は成人人口の流入を加速することで国内市場の縮小をスローダウンさせるという方策です。もう1つは中間層の「働き方」を英語にしてしまい、広い意味での英語圏をサービスや事務仕事の市場にするという考え方です。
これに加えて、調査でも弱点が明らかになった、コンピュータの活用スキルを向上することが重要でしょう。この問題に関しては、公教育で対応して後手後手に回るよりも、スキルが正当に評価される仕組み、つまり「コンピュータが使えない管理職が優遇され、使える人間は作業レベルだとして低賃金に据え置かれる」というカルチャーを克服することが重要だと思います。
いずれにしても、OECDの「成人力調査」の結果は、様々に重たい課題を突きつけているように思われます。
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