「オバマケア」のシステム不具合で窮地に立つオバマ - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年11月14日 13時38分
現在のアメリカでは「オバマケア」の名前で呼ばれる医療保険改革の問題が連日のようにニュースのヘッドラインになっています。と言っても、改革を進めるのか、あるいは共和党の言うように新制度を「廃止」するのかという議論ではありません。
10月からスタートした「新医療保険」、つまりこれまで保険に入れなかったか、あるいは入っていても保険料が高額で困っていた人向けの「政府の補助付きの新型医療保険」、その「加入申し込みシステム」の不具合が解消されないのです。この問題は今となってはスキャンダルと化して、一日一日とオバマ政権への信頼感を傷つけています。
一番の問題は、「強制移行」の対象者です。旧制度の下で、企業や官公庁などの「雇用主が保険会社と契約して入る保険」でカバーされていた人々(実際はアメリカ社会の多数派ですが)は、今回の制度改定での影響は余りありません。問題は、これまで「全額自己負担」という個人契約の医療保険に入っていた人々です。こうした「全額自己負担の個人加入保険」というのは新制度の発足に伴って廃止されることになっているのですが、問題はこの対象にあたるグループです。
このグループは、2014年から「オバマの新制度」による「政府補助付き新型医療保険」に「強制加入」になるのです。既にそのような告知がされており、従って「新しく新型医療保険に入らないと、無保険状態になってしまう」のです。ところが、その新型保険の申し込みシステムがトラブっているわけで、そうなると本当にこうした人々は保険が切れてしまうことになります。
また現在無保険の人の場合も、この「新型医療保険」に入れるわけですが、更に「国民皆保険」を徹底するために「罰則規定」があり、2014年の4月1日までに保険に入っていない人には「追徴課税」がされるということになっています。ちなみに、この罰則の適用を逃れるには、3月31日までに手続きをしたのでは遅く、事実上は2月15日くらいまでに手続きをしておかないと4月に保険の空白ができてしまうのです。
さて、現時点(アメリカ時間の11月13日)で切迫した問題は、そのように罰則規定という強制力を持って導入しようとしている新制度にも関わらず、オンラインでの手続きがスムーズでないという問題です。実はオバマ政権は「情報公開」を渋っていて本当の実情は分からないのですが、とにかく、手続きに時間がかかったり、システムがダウンしたりという問題が続いています。
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