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産むべきか産まざるべきか......一人っ子政策緩和がもたらすもの - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年12月2日 21時0分

 この状況を中国では「人口紅利を失ってしまう」(紅利はボーナスの意)と呼んでいる。技術力はなくても人手の多さという人海戦術ですべてを補ってきたこの国で労働力が失われれば、文字通り経済を「動かす」人手が減っていく。同時に人口の老齢化が進み、2013年の時点で2億人とされる60歳以上の老人の数が2030年には4億に達する見込みで、総人口に占める割合は現在の7分の1から4分の1にまで増大する。つまり来年生まれる子どもがようやく労働年齢に達した時にはもう4人に1人は老人ということになっている計算だ。

 実はこの養老問題と、「2人目を産むべきか」で頭を悩ませる親たちの問題は根っこは同じだ。国の公共福利があまりにも「役に立たない」ことだ。

 個人が納める養老年金の総額は2011年の時点で帳簿上では2兆元(約33兆円)積み立てられていることになっているが、実際に資金口座に残っているのはその約10分の1のわずか2千億元あまり(約3兆3千万円)だという。つまり、1.7兆元(約28兆円)が「行方不明」になっている。こんな管理で今後増え続ける老人たちへの支給はどうなっていくのか、いや自分が実際に支払ったお金がどこに消えていくのか、人々にはなんの説明もなされていない。

 そのお陰で、最近ネットでは「自前の養老金」話題がブームだ。25歳で国に養老年金を納めずにその分毎月500元(約8500円)を貯金する。それを続ければ55歳の時には総額40万元(今のレートで約6000万円あまり)を超え、これを定期預金にした上で、5年後に退職金を受け取れば「国の手を煩わせずに暮らしていけるはず」だというのである。

 そう、人々は社会主義国なのに、すでに「自前で暮らす」ことを常に考え始めている。

 2人目の子どもを生む場合のシュミレーションでも、まったく同じパターンで若い夫婦は躊躇する。子供の学費、それもよい教育を受けさせるためのエクストラの費用、さらに養育費、ミルクだって国産の安いものでは安心できない。住宅ローンも残っているし、車もほしい。たまには外国旅行だって楽しみたい。2人目を産めば、教育費も養育費も倍を覚悟しなければならないし、手間暇も倍かかる、さらには家のスペースのことも考えなければならず、夫婦の親たちの老後も支えていかなければならない。

 昔の中国人家庭は子沢山で年老いた親の面倒を「誰か」が見ていた。だが2人目を生むことを許された夫婦はどちらか1人は少なくとも一人っ子だ。子ども2人を抱え、どちらかの親、あるいは双方の親も抱え、自分の老後の心配をしなければならない...いまやっと消費生活を楽しめる様になった若夫婦にとって、それではあまりにもリスクが大きい。

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