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日米地位協定の改定論議、「基地の環境問題」とケネディ家の意外な関係とは? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2013年12月19日 13時31分

 1990年代になって各種の砲弾の爆発による環境汚染が問題となると、抗議活動がだんだんとエスカレートしていきました。重金属類から弱い放射性物質など、色々と毒性のある物質がこの島を汚染していたのです。抗議活動は、最初はプエルトリコ人だけの運動だったのですが、1999年頃からはアメリカ本土からも環境活動家たちが参加して大きな運動になっていったのです。

 有名なエピソードとしては、2001年の4月に、以前から環境運動家として活動していたロバート・ケネディ・ジュニア氏(故ロバート・ケネディ司法長官の息子、JFKの甥)がビエケス島に乗り込んで「砲弾の飛び交う射撃訓練の近くでキャンプをする」という実力行使に出たという「事件」があります。

 ケネディ氏は逮捕されてしまいます。これに対しては、ニューヨークの元知事であるマリオ・クオモ氏(現知事のアンドリュー・クオモ氏、CNNキャスターのクリス・クオモ氏の父親)が弁護士として奔走したのですが、ケネディ氏は収監されてしまいました。ちなみに、アンドリュー・クオモ現ニューヨーク州知事は、その逮捕されたロバート・ケネディ・ジュニアの娘と結婚していたのです(その後、離婚)。

 結果的にブッシュ政権は、「反テロ戦争」遂行に向けて国内の分裂を避けるため、おそらくはヒスパニック票の支持を失いたくないという計算からか、2003年になって、このビエケス島の射撃場を閉鎖するという判断に追い込まれました。プエルトリコと環境運動の側としては勝利した格好となったのです。

 このロバート・ケネディ・ジュニアという人は、現駐日大使のキャロライン・ケネディ氏の「いとこ」に当たります。この2人、2008年の大統領選でキャロライン氏はおじのエドワード・ケネディ上院議員と一緒にオバマを支持した一方、ロバート氏の方はヒラリー・クリントンを支持し、対応が分かれました。

 またキャロライン氏自身は、元「いとこの娘婿」であったアンドリュー・クオモ現ニューヨーク州知事との間で、2008年にヒラリーが「上院議員から国務長官への転出」したときには、「ニューヨーク州選出の上院議員」の座を争ったこともあります。



 そんなわけで、離婚やら対立やらのファミリードラマが絡まる中での1つの重要な事件として、「ケネディ家とビエケス島」の問題というのは大きなつながりがあるのです。ですが、いくら大統領選で支持候補が異なったとか、議員のイスを争ったというエピソードがあったにしても、キャロライン・ケネディという人は、ニューヨークのリベラルな政界の中にいたわけです。ということは、政治的にはこの「ビエケス島問題」に関しては、環境保護側の視点で関わっていたのは間違いないと思います。

 勿論、この問題は日米中の3カ国の外交と安全保障も絡みますし、普天間返還ということは辺野古の問題、あるいは垂直離着陸機のオスプレイ増備といった問題とも「セット」になっているのは事実です。そうした複雑な背景に関しては、もしかしたらケネディ大使は目下のところは「学習中」なのかもしれません。

 ですが、とりあえず普天間の返還を前提にして、新たに「環境条項」を設ける地位協定の改定という形で日米合意に持っていくのは、大変に意味のあることだと思います。こうしたタイミングで、「ビエケス島の射撃場を閉鎖に追い込んだ」政治的経緯に関わるケネディ家のキャロライン・ケネディ氏が駐日大使であることも、何かの縁なのだと思います。




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