靖国参拝はお粗末な大誤算
ニューズウィーク日本版 / 2014年1月14日 13時40分
これはあまりにも極端で奇妙な批判だが、一方で安倍の靖国参拝が北東アジア諸国の対立を悪化させるという米政府の公式見解は正しい。
だがそんな時だからこそ、日本とアメリカは静かな外交を続けるべきだ。同盟国は率直な意見交換をするべき時があるものだが、それは非公式の場でやるのが一番いい。
安倍の靖国参拝について米政府が発表した声明で最も注目を集めているのは、「失望している」という表現だ。
12月29日付の朝日新聞は、元外交官で京都産業大学教授の東郷和彦の次のような主張を紹介している。「同盟国に対して『失望した』と言うことの恐ろしさを知ってほしい。外交の世界で同盟国にこんなにはっきり言うのは異例だ」
だがもっと危険なのは、安倍に対する失望感がアメリカに定着してしまうことだ。東郷は言う。「万が一、中国との間で戦争状態になったとき、アメリカの世論は......中国を挑発するような愚かな国のために血を流す必要があるのか、ともなりかねない」
米政府が「失望」という表現を和らげる気配はない。国務省のマリー・ハーフ副報道官は12月末、「アメリカが失望したこと、そして(安倍の靖国参拝が東アジアの)緊張を悪化させると考えていることは、当初選んだ文言によって極めて明確に表現されていると思う」と語った。
北朝鮮まで図に乗る恐れ
危険なのは、こうした日本に対する疑念と不透明感が少しずつ広がっていることだ。その意味では、米政府の声明は「失望」や「地域の緊張を悪化させる」という表現ではなく、「アメリカは遺憾に思い、地域の和解を求める」とするべきだった。
そんな生ぬるい表現では、靖国参拝という安倍の挑発的な行動を「おとがめなし」にしてやるようなものだという批判もあるだろう。その指摘には一理ある。しかし現在の東アジアにはもっと重要な問題がある。
CFRのスミスは、「安倍は中曽根(康弘)や小泉(純一郎)ら(靖国に参拝した歴代の首相)とは異なる課題に直面している」と指摘する。「領土問題、歴史と軍事力をめぐる微妙な問題、そして経済力の劇的な変化が合わさって、東アジアにはきな臭い雰囲気が漂っている。現在の日本は、安倍の前任者たちの時代よりもずっと大きな戦略的リスクを抱えており、ずっと複雑な状況にある」
安倍が靖国参拝を控えるべきだったのは、まさにこうした状況があるからだ。しかし参拝してしまった以上、アメリカとしてはそれを厳しくとがめることでこの地域の分断を刺激しないことが重要だ。
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