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少女が熱狂「ワン・ダイレクション」って何者?

ニューズウィーク日本版 / 2014年2月10日 16時20分

 どのくらい超えているかを描いているところに、この映画の面白さがある。もちろん、密着映像にありがちな、「ここに到達するまでに彼らはあらゆる犠牲を払ってきた」という筋書きもある。息子になかなか会えないリアムの母親がコンサート会場の売店で等身大のポスターを買う場面は、ブラックユーモアも感じさせる。



素顔はごく「普通」の男の子

 だがカメラが繰り返し捉えるのは、飛び切り有名な若者のいとおしくて愉快な「普通さ」だ。

 メンバーの鼻をいじるハリーは愛嬌たっぷり。ライブの後に映画監督のマーティン・スコセッシが楽屋を訪ねてきても、イギリス育ちの彼らには誰なのか分からない。ライブ会場の巨大なアリーナ(チケットは完売)を走り回る姿は、まるで子犬の兄弟だ。ツアーバスの中では、おならをしたのは誰だと追及し合う。

 何よりも、世界的な人気バンドになったことを、本人たちはユーモアたっぷりに受け止めている。ルイは自分たちが、「とにかく楽しんだ......普通の男たちだけど、ダンスは最悪だった」バンドとして語り継がれたいと言う。

「映画監督として貴重な経験をした」と、スパーロックは言う。「世界的な人気バンドが、さらに大きな世界的現象を巻き起こそうとしているときに撮影することができた」

 スパーロックはプレミア上映会の直前に、マンハッタンのホテルで取材に応じた。ワン・ダイレクションの姿を一目見ようとホテルの中にも外にもファンが集まっていて、私たちのいる7階の部屋まで叫び声が聞こえてきた。

 今回の歓声は、コアなファンを超えて届くだろう。興行成績の新記録を達成する勢いのこの映画に加えて、13年11月には3枚目のアルバムを発売。14年にはスタジアムツアーも行う予定だ。

「彼らと長い間一緒に過ごしてきたから、今では私のiPodの至る所にいる」と、スパーロックは笑う。「シャッフル再生にしているとアリス・クーパーやメタリカの次にひょっこり出てくる。そういうときが本当にいいんだ」

[2013.9.24号掲載]
ケビン・ファロン


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