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アーミテージ氏と櫻井よしこ氏に異議あり! - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2014年3月4日 11時33分

 共同通信によれば、ワシントンの日本通人脈のベテランである、リチャード・アーミテージ元米国務副長官は2月27日に、ワシントンのシンクタンク「日米研究インスティテュート(USJI)」が開いた会合で、安倍晋三首相の靖国神社参拝について「中国が外交的に利用できる」という観点から「反対だ」と述べたそうです。

 また、従軍慰安婦問題に関しては、「現代の日本の人権保障や日本国民に対する高い国際評価を傷つけている」と指摘し、こちらに関しても安倍政権に注文を出したと伝えています。

 私はその場にいませんでしたし、発言の原文を検討したわけではありませんが、少なくともこの配信内容や、他の新聞の電子版の記事を総合すれば、このような発言があったのは事実のようです。

 中国を利するから危険だとか、慰安婦問題は日本の評価を傷つけるという主張は、私がこのブログや先月の朝日新聞のインタビューでも述べてきた内容に合致します。アーミテージ氏が私の発言を踏まえているかどうかは分かりませんが、それとは別に、日本の保守と相性の良かったという評価のあるアーミテージ氏が、このような発言にシフトしていることに、私は違和感を持ちました。

 例えばイラク戦争に際して「ショー・ザ・フラッグ(旗幟を鮮明にせよ)」などと日本に迫り、その際に日本の保守イデオロギーに理解を示すような言動を繰り返していたことを、氏はどう反省しているのでしょうか? それは単なる損得勘定だったのでしょうか? あるいは「他に日本には友人がいないから」という消去法だったのでしょうか? また「共産主義という共通の敵」がいた時代からの「惰性」で組んでいただけだったのでしょうか?

 そうした過去と、現在の「もっともらしい正論」の間のギャップを誠実に語ることなく、日本の世論に対する「上から目線」を感じさせるような形でこうしたコメントが独り歩きしても、効果は限られているように思います。同氏には猛省を促したいと思うのです。

 一方で、その朝日に掲載された私のインタビューに関して、櫻井よしこ氏が3月3日の産経新聞(電子版)のコラム「美しき勁き国へ」で「思わず苦笑した」と書いているのには、私のほうが「苦笑」してしまいました。苦笑したというのは、私のロジックの本論には反論せずに、ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』を比喩的に使っている点を批判しているだけだったからです。

 ですが、この櫻井氏のコラムの本論そのものは深刻な問題を抱えており、とても「苦笑」では済みません。

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