「3・11」3周年、分裂が固定化しつつあるエネルギー問題 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2014年3月11日 12時29分
また、事故機は「第1世代」の米GE製であって、トルコ等が買おうとしているのは、それから比べると「第3世代プラス」という新しい技術の搭載された日本製です。トルコから見れば、GE製の旧型が事故を起こしたからと言って、「第3世代プラス」の日本製を拒否する理由にはならないわけです。
そうではあるのですが、維新の会の場合は、一方で「自分がやめようとしている原発を輸出するのは不誠実」だという意見があり、一方では「核武装を見据えた核開発が自分の文明観」などという極端な立場があるわけです。これでは、意見が一本化するはずはありません。
似たような構図が、総理大臣の「家庭内」にも見られるようです。政府は、原発再稼働と、電力会社の経営再生を狙った「エネルギー基本計画案」を策定しています。ここでは「ベースロード電源」という考え方が導入されています。耳慣れない言葉ですが、要するに電力需要の波に関わらず最低限の需要をコンスタントに担う部分という意味です。これは他ならぬ安倍政権の方針であるわけです。
ですが、首相夫人である安倍昭恵氏は、報道によれば都内で居酒屋を経営し「放射線が検出されそうもない西日本の食材」を中心に提供する一方で、脱原発の立場を明確にしています。これに対して首相は「家庭内野党」だとして、夫人との意見の相違があることを隠そうとはしていません。
このエピソードに関しては、当初は「スキャンダル」だというニュアンスでも受け止められていたのですが、今では既成事実化しています。そして、むしろ「家庭内の意見不一致」を隠さないことが夫妻の「誠実さ」のようなニュアンスも出てきているように思われます。
それどころか、考えてみれば多くの日本の、特に東日本の家庭では、原発再稼働問題に関して、このような「家庭内での意見不一致」というのは「よくある話」であるわけです。そう考えると、総理夫妻の状況は、東日本のこの世代の夫婦間にある問題を「典型的に代表している」とすら言えることにもなります。
選挙結果というのもよく分かりません。2012年末の衆院選で自民党が勝って安倍政権が発足した際には、「脱原発的なムードは不信任された」という解説がされ、選挙結果も何となくそんな印象でした。ですが、その安倍政権は、現在まで再稼働には慎重なままです。
2014年2月の都知事選も「脱原発」が争点になりかけたわけですが、結果は曖昧なままに終わりました。脱原発のエネルギーは、党派を超えたものにはならなかったのでしょうし、雪という悪天候を超えて有権者を投票所に向かわせるパワーにはならなかったのです。というと少々言い過ぎで、「脱原発に関する判断をするという有権者へのムリな期待」が雪に勝てなかった、あるいは組織票には勝てなかったという感じでしょうか。
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