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海に落ちた針 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2014年3月13日 19時47分

 ソーシャルメディアではこんなつぶやきがさまざまなバージョンで転送された。消息不明になってすでに数日たっているのに、事態は同じことを繰り返しているばかりで遅々として何も進まず、中国メディアはあいも変わらず独自取材情報を流せないままだ。ただ前述したようにベトナムがここから撤退し、捜索にはインドが加わる可能性がある程度だ。

 積極的な情報提供をしようとしないマレーシア側の態度は、明らかに周囲を困惑させている。もう一つ、捜索が長引く中で飛行機の行方不明が明らかになったばかりの時に流れた情報も気になっている。今回の飛行機は2年前に上海の空港で中国の航空機とぶつかり、翼の一部を欠損していたという。きちんと翼の折れた同機の写真も付けられており、信ぴょう性は高いが、同航空はその事実は否定しなかった(が肯定もしなかった)ものの、「同機は数カ月前にメンテナンスを行ったが問題はなかった」と記者会見で繰り返すのみだった。

 航空事情に詳しい人の話によると、この機体破損情報は航空関係者内でも一時話題になり、専門メディアなどで討論されたが、当時の修理状況についてはマレーシア航空が握っているはずの同機の「カルテ」を見なければ判断できないのだという。そして同航空がその情報を出さない状態では具体的なことは何も言えないらしい。こんなふうに、機体が見つかっていない間にもマレーシア側が疑惑やデマを解消するために提供できる情報はもっとあったはずなのだ。

 この事件において最も大きな注目を集めた情報の一つが乗客の2人が盗難パスポートを使ったらしいという話についても、その2人がクアラルンプールから北京、そしてそこで乗り換えてアムステルダムへ、さらにそれぞれフランクフルトとコペンハーゲンに向かう予定だったという旅程を明らかにしたのは、2人にチケットを売った南方航空(MH370はマレーシア航空と中国南方航空のコードシェア便だった)を取材したイギリスメディアだった。

 さらに、その2人が同便を選んだのは本人たちの意志ではなく、実は「格安ルート」を求められた旅行代理店の職員だったことを突き止めたのもやはり別のイギリスメディアだった。そこから手に入れたチケット代理注文者の電話番号を元に、インターポールが最終的に、2人はただ「欧州への密入国を図っていたイラン人」だったことを割り出している。



 その間、マレーシアの政府関係者は監視カメラに映っていたという盗難パスポート利用者の容貌について記者会見で尋ねられ、イタリアの黒人サッカー選手の名前を挙げて彼にそっくりだ、などと答えていたのである。その後公開された監視カメラの映像を見ると、くだんの2人は同選手そっくりどころか、黒人ですらないことは誰が見ても明らかだ。

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