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海に落ちた針 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2014年3月13日 19時47分

 さらに12日午後に同国政府が開いた記者会見では、同機が最後にレーダーに捉えられた時間がまた訂正され、呆れられている。英紙『デイリー・テレグラフ』記者はツイッターで、「最初は午前2時40分と言い、その後に1時30分と訂正し、そこから2時40分だと言い直し、今度は2時15分だってさ......」とつぶやいている。さらにイギリス公共テレビ局のチャンネル4の記者は「最後にレーダーに映ったのは土曜日早朝の2時14分という発表に、『(位置は)どこだ?』とジャーナリストたちが叫んだが、政府関係者はそれには直接答えなかった」と伝えている。

 同機の搭乗者である乗員12人を含めた239人のうち、そのうち3分の2に当たる153人が中国人だったことから、中国メディアも大きく注目している。特に今月1日に雲南省昆明で起こった無差別大量殺傷事件からそれほど日が経っていないこともあり、大量の中国人が巻き込まれるというこの大事件はあっという間に、人々の関心を1年に1度の二大政治会議(政治協商会議、全国人民代表大会)から奪いとった。

 人々はネット、特に微博などのソーシャルメディアで流れる情報にかじりついた。しかし、問題は前述したように当事者であるマレーシア側から流れる情報が少ないこと。それと同時に、中国メディア――特に日頃は世界各地に駐在記者を置いていることを喧伝している政府系メディアが今回、まったく現地から独自情報を取材して返してこないことに人々は気が付いた。

 中国のメディアでまだまだ海外に記者を駐在させる能力や資金力を持っている媒体は限られている。国のトップの訪問やあるいは特別な必要に応じて特派員を出すメディアは増えてきたものの、主要関係各国に駐在員を常駐させているのは中央電視台、新華社、『人民日報』などの豊富な資金力を持った伝統的政府系メディアくらいである。中央電視台はかつて「スターバックスの中国国内での価格が他国より高い」「アップルのメンテナンスサービスが他国に比べて差別的だ」と騒いだ時には海外特派員を縦横無尽に使ってこれみよがしに騒ぎ立ててきたのに、その彼らは今回まったく「機能」しなかった。

 ネットには情報を求める人があふれたが、飛び交う情報は外国メディアの翻訳がほとんどで、そのうちに憶測、推測、デマが乱れ飛ぶようになる。さらには政府系メディアの微博アカウントなどが「祈ろう! MH370よ、どこにいるのだ? 皆が待っているよ、早く帰っておいで」といった「売萌」(ぶりっこ)つぶやきを連発して、若いユーザーたちを煽り始めた。中国政府系メディアは最初の数日間、「中国の捜索船が当該機のものとみられる油の跡を発見......」「残骸の一部を発見......」などという情報を流しては、わずか十分間のうちに否定されるということを繰り返す無能ぶりだった。

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