第一夫人 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年3月25日 7時43分
だが、人々のファーストレディ外交への興味はその日が終わるとあっという間に萎んでしまった。メディアでは政治評論家が相変わらず、「2人の女性の交流が、波風の多い米中関係を穏やかにしてくれるのでは」とか「米中首脳の橋渡しをしてくれるのでは」という期待論を展開していたが、2人の間に特に目立って盛り上がった話題もなかったようで、週明けにはミシェル夫人は娘たちとともに西安に向かい、彭夫人は習主席と連れ添ってオランダに旅立った。
ほんの一瞬、華やかな話題に期待した人たちの心は、再びPM2.5のスモッグに覆われた空気とともに、どんよりとした気分に戻ってしまった。
最近の中国は本当に心が重くなるニュースばかりが続いている。
マレーシア航空機の捜索は機体の行方が分からないまま3週間目に入った。乗客の家族たちは一部がマレーシア航空の手配でクアラルンプールに、一部が北京のホテルに、さらに一部はこのまま待っていてもらちが明かないと地元に帰ってしまった。事故なのか、事件なのか、はたまた機材の故障なのか。一時は盛んに語られていた機長及び副操縦士のハイジャック説も、それを匂わす証拠も出てこないまま宙ぶらりんになっている。
乗客の家族たちはメディアから切り離されており、また初動の家族取材の気まずさから、中国メディア関係者は家族にどうアプローチしたものかと思いあぐねている。食事の席でわたしに「家族を取材すべきだと思う?」と尋ねてきたジャーナリストは1人や2人ではない。たぶん、彼ら同業者の間ではそれが大きなネックになっている。今伝えられるのは「乗客の肖像」しかないと思いつつ、彼らはどうしたものやらと悩んでいる。
一方で香港フェニックステレビがクアラルンプールで家族との接触に成功した。記者が家族と挨拶した際に連絡先の紙切れをそっと渡し、家族からの連絡を待って同じホテルに取った部屋で真夜中にインタビューを行ったそうだ。カメラの前でその家族は、「昼間は航空会社の監視がつき、電話もできない。彼らが寝静まった夜中になってやっとこうやって出て来られる。まるで監獄にいるようだ」と語った。だが、その映像が放送された翌日、彼が泊まっていたはずのホテルの部屋はもぬけの殻になっていたという。関係者に別のホテルに移動させられてしまったそうだ。
北京でも、あまりの進展の無さに怒った家族が暴れたり、航空会社職員に掴みかかり、ハンストを始めたりしている。放って置かれている家族の焦燥と悲しみと不安は深まる一方だ。
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