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第一夫人 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2014年3月25日 7時43分

 不思議なのは、239人の乗員乗客の中で153人(香港籍を含む)が中国人であることがわかっているのに、中国当局が捜索にとても消極的に見えることだ。インドに領海内での捜索を拒絶されるなど中国の軍隊を警戒する動きも見られるが、オーストラリア沖の海面捜索チームのリストにも中国は名を連ねていなかったりと不思議だらけだ。

 たとえば、米軍機にはAPの記者などが同乗して捜索の情報を流しているが、中国の捜索機、捜索船上からの報道は政府系メディアですら流れてこない。そんなチャンスなど決して回ってこない市場型メディアも諦めたように外電からのニュースを転送するばかりだ。その生ぬるさはいったいどうしたことなのだろうか。

「習近平はマレーシア航空機の乗客家族を見舞えばいいのに」と、あるジャーナリストは言った。そういえば、今回の事件で習と言わず、国家指導者の一人でもホテルに待機している家族の元に姿を見せたという話は聞かない。「庶民の集まる店で包子(肉まん)を食べてみせたり、若者で賑わう下町に姿を現したりするくらいなら、悲しみにくれる家族を励ますのが指導者の仕事でしょうに」と、家族取材に苦悩する彼女は苦々しげにつぶやいた。

 そういえば、温家宝前総理はこういうとき一番に悲しみにくれる人たちの前に姿を表した。家族と一緒に泣くというパフォーマンスをやってのけるものの、結局その後の施策が伴わないことで「影帝」(「最優秀男優賞」の意味。つまり「演技がうまいよね」)と皮肉られ続けたものの、温前総理はそういった「慰問」を止めようとはしなかった。その後の一歩踏み込んだ何かに続かないのは確かに失望させられたが、だがあれはあれでどうしようもない悲しさに打ちひしがれる当事者たちにとって、宗教にも似た慰めをもたらしてくれたのではないか。少なくともそれをテレビで見て、ほっとさせられる「傍観者」はいたはずだ。

 だが、習時代に入って、李克強総理どころか、華やかなファーストレディもその辺には興味が無いらしい。オランダでにこやかに花に水をやる写真が流れてきている。華やかな話題作りや中国の夢をふくらませるのは得意だが、習主席も彭夫人もさらには今の党トップたちも、こうした庶民が出口が見えない辛さに同仕様もなくなっている時に力になってくれる人ではないらしい。

......とここまで書いたところに、マレーシア航空から待っていた家族たちに携帯メッセージで「様々な証拠から飛行機はインド洋南部に墜落したと思われる」「生還者はいない」「数時間以内にマレーシア総理による会見があるはずだ」と伝えられたという情報が流れてきた(編集部注:マレーシアのナジブ首相は24日夜、マレーシア航空370便が「インド洋南部で飛行を終えた」と発表。オーストラリア南西沖で墜落したとの見方を示唆した)。

 これまで散々むちゃくちゃな情報ばかり流して、家族ばかりではなく捜索協力者も振り回してきたマレーシア。たとえその捜索結果がこのまま明らかにされても、同機で何が起こったのか真相が明らかになるにはまだまだ時間がかかるはずだ。家族はその日まで眠れない夜を過ごすことになるのだろう。だが、彼らに寄り添ってくれるのは今の中国政府ではないようだ。

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