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アメリカで政争化する「エボラ・パニック」 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2014年10月21日 14時24分

 もう1人の看護師の方は、一時は重い症状が出ていたという報道もありましたが、容体は安定してきているそうです。いずれにしてもこの両名は、発症直後は勤務先であるダラスの病院で治療を受けていたのですが、より専門的な病院への移送が決まってダラスを去る時には、病院のスタッフ総出で見送りをして、特に看護師仲間は「ガンバレ」というプラカードを掲げるなど「熱い連帯の姿勢」を示していたのは印象的でした。

 さらにこの病院で、死亡した患者の血液等を検査のために扱った技師が、メキシコ沖の「豪華客船クルーズ」に乗船していたことが判明し、技師は自主的に「隔離」つまり自室にこもる措置をしました。アメリカ政府は、ケリー国務長官の判断で、この技師を緊急下船させて、ヘリ移送することを考え、至近距離にあったベリーズ、そしてメキシコへの寄港をアメリカ政府として要請したのですが、両国からは拒否されてそのままクルーズ船はアメリカ本国に戻っています。



 こうした混乱を受けて、オバマ政権はロン・クラインという長年民主党政権の事務方を務めて、少し前にはバイデン副大統領の補佐官を務めていた「仕事師」をエボラ問題の「コーディネーター」に任命しています。

 いずれにしても、仮にこれ以上の2次感染、あるいは3次感染、そして新たな発症者が出なければ、今週が「軽度のパニック」のピークで、アメリカに関して言えば、ヤマを越えた状態になる可能性もあります。では、現在の「軽度のパニック」というのは、どの程度かというと、まず「クリーブランド往復」をしてしまった看護師の足跡に関しては、前述したようにかなり騒ぎになったということがあります。

 またこれとはまったく別に、ワシントン郊外の国防総省では、16日に駐車場で車を降りた途端に嘔吐した職員が、そのまま防護服を着たチームに連行され、その一帯は即座に立ち入り禁止になったという出来事があったそうです。

 さらにはアメリカン航空の国内便で、機内で嘔吐してしまった女性が、そのままトイレに監禁されたり、あるいは学会でテキサス州のダラスに行ったというだけで21日間の「出勤停止」を食らった先生がメイン州でいたりと、色々な過剰反応が出ています。ひどいといえばひどいですが、現状のパニックはこの程度のレベルです。

 問題は、エボラへの対応が政争の材料になっていることで、特に一部の共和党下院議員の「ポピュリスト」的な人々と、民主党の候補で今回の上院選で厳しい戦いになっている2人は、「西アフリカからアメリカへのフライトの禁止」を主張して、オバマ政権から任命されたばかりの「コーディネーター」であるクライン氏と対立しています。

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