睡眠の最新トレンド「パワーナップ」の心得
ニューズウィーク日本版 / 2015年1月27日 15時4分
「昨日は4時間しか寝ていない」など、睡眠時間の少なさを「できる証」として自慢する風潮は世界共通らしい(自慢を聞かされてウンザリすることも)。だが、そんな自慢は時代遅れになりつつある。
アメリカでは、ビジネス・エグゼクティブやテレビ司会者などによる仮眠(ショート・ナップ、パワー・ナップとも言う)習慣のカミングアウトがトレンドになっている。ほとんど寝ずに働き続けて「成功」を手にしたものの、身体を壊し、精魂尽き果てて壁にぶつかったセレブたちが、睡眠の大切さをを見直しはじめているのだ。
米ネットメディア、ハフィントンポストを創設したアリアナ・ハフィントンもそうした睡眠の伝道師の1人。成功と幸福感を同時に手に入れるためには十分な睡眠をとることが不可欠、極端に言えば「よく眠るだけで出世はできる」と、近著『サード・メトリック』や著名人のプレゼンテーションサイト、TEDなどで繰り返し強調している。
ハフィントンは、ハフィントンポストをアメリカで最大級のニュースサイトに育て上げる過程で、睡眠不足で転び、テーブルの角に頭をぶつけて寝込む、という挫折を経験して以来、8時間睡眠を5年間実践している。そうすることで、仕事の効率が上がり、自分の人生もコントロールできるようになるという。日中でも、疲れを感じたら1分間目をつぶって身体の力を抜く。スタッフには仮眠を奨励しており、仮眠室も設置している。
トーク番組司会者のチャーリー・ローズはもっと本格的だ。朝の番組が終わった後に1回目、午後のトーク番組の収録前に2回目と、1日最低2回の仮眠をとる。夜に外出する用事があればその前にもう1回と、計3回眠ることもある。
睡眠不足が仕事と人生の成功の妨げになることは科学的にも証明されている。2011年にハーバード・メディカルスクールが発表した研究結果によると、睡眠不足による生産性の損失コストは年間630億ドルに上ると試算する。また2012年にイギリスで実施された「英国睡眠調査」によれば、人は睡眠不足になると7倍の確率で無力感を感じ、5倍の確率で孤独感を覚えるという。とくに女性は自分の睡眠時間を削ってまで仕事と家庭を両立しようとする傾向があるため、よけいに心身のバランスを崩しやすくなる。心疾患や糖尿病のリスクも増加する。
何となくわかってはいても十分な睡眠を取ることができないのは、休むことに罪悪感を感じ、睡眠を削ることに自己満足を感じる風潮があるからだろう。事実、大半の職場では昼寝などとんでもない話。そろそろ、真の成功者の声に耳を傾けるべき時だろう。
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