中国の植民地主義を黙認した日本の失点
ニューズウィーク日本版 / 2015年5月12日 17時6分
日本の安倍晋三首相が先週、インドネシアのアジア・アフリカ会議に出席し、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席らと会談した。安倍は「強い者が、弱い者を力で振り回すことは、断じてあってはならない」と演説したが、物足りない感は否めない。
バンドン会議とも称されるこの国際会議は、60年前、独立したばかりのインドネシアのスカルノ大統領と「エジプトのライオン」ナセル首相、インドのネール首相らの推進で実現したものだ。
史上初めてとなる、アジアとアフリカの有力な政治家たちが一堂に会した会議は「反帝国主義と反植民地主義」を訴えて「バンドン10原則」を宣言した。「すべての国家の主権と領土保全の尊重」「あらゆる人類の平等と大小すべての国家の平等の承認」「侵略または武力行使によって、他国の領土保全や政治的独立を侵さない」......。
どれも美しいスローガンだったが、何よりもアジア・アフリカ諸国にとっては白人の植民地支配から独立を獲得し、有色人種が自らの政権を打ち立てた意義が大きかった。
だがバンドン会議は途中から老獪な中国の周恩来首相の意のままに進んでいった。そもそも会議の成果とされる「バンドン10原則」でさえ、開催前年に周が提唱した「平和共存5原則」論を基礎にしたものだった。
国境外に砂を混ぜる戦略
会議はその後も定期的に開催の予定だったが、62年に中国人民解放軍がヒマラヤ山脈を越えてインドに侵攻したことで、早くも「諸国の結束」は水泡に帰してしまった。そもそも周の「平和共存5原則」にしても、当時は弱小な国家だった中華人民共和国が米ソ2大国の間で存続し続けるための策略にすぎなかった。弱い中国が同じく貧窮のインドに攻め込んだことで、バンドン会議に参加した各国の首脳陣は冷や水を浴びせられた。
皮肉なことに、今や北京当局こそが、「バンドン10原則」に反する覇権主義を世界で繰り広げている。習は周以来の「平和共存」の仮面を破り捨てて、南シナ海の岩礁に軍事施設を建造してフィリピンを威嚇。日本の尖閣諸島を中国領と主張して軍拡路線を突き進んでいる。
「一帯一路」と表現する「シルクロード経済ベルト」(帯)と「21世紀海上シルクロード」(路)も、アジアインフラ投資銀行(AIIB)も、すべては「中華民族の偉大な復興」のためだ。中国が強引に推し進める経済圏戦略はあたかも自国を中心とした新植民地体制の構築を目的としているかのようだ。国際社会への挑戦にもみえる。
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