ベルリン・フィルの次期音楽監督人事を考える - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2015年6月2日 12時51分
私が可能性を感じているのは、この2人ではなくカナダ人のヤニック・ネゼ=セガンという40歳の指揮者です。現在、フィラデルフィア、モントリオール、ロッテルダムの3つのオーケストラを掛け持ちしながら、MET(ニューヨークのメトロポリタン・オペラ)のオペラでの指揮でも高評価を得るなど、非常に精力的に活動している人です。しかも、3つのオーケストラで既に実績を挙げていますから転出できる可能性はあります。
ネゼ=セガンの強みは彼の知性です。とにかく、楽譜を徹底的に検討して過去になかった解釈を作ってくる、そして的確な言葉(英仏の完全バイリンガル)で楽員や聴衆にメッセージを伝える、それが彼のスタイルであり、世界を駆け巡りながら各地で水準以上の演奏ができているのは、そうした彼の知的な生産性の高さによるのだと思います。故ジュリーニの弟子で、マーラーとブルックナーの楽曲研究に余念がないばかりか、フランス系も得意だし、20代の時には合唱指揮者の勉強も集中的に行うなど、守備範囲の広さも魅力です。
これから最終的な人選が決まるまで、この3人の仕事ぶりを比較しながら人事の予想をするというのが、音楽ファンの究極の楽しみです。
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