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ロシアのウクライナ侵攻準備、その決定的証拠

ニューズウィーク日本版 / 2015年6月5日 12時0分

 ロシア軍が再びウクライナ国境地帯に軍事車両を動員し、基地を設営してウクライナ側に侵攻している──そのことを示す証拠が次々に出てきている。

 先週、ワシントンに拠点を置くシンクタンク「大西洋協議会」が報告書を発表。ウクライナ国境付近にロシア軍の基地が設営され、本格的な侵攻準備が進んでいる実態を明らかにした。

 報告書の発表と時を同じくして、ロイター通信の記者がウクライナ南東部の国境付近でロシア軍が数百台の戦車やロケット発射装置などを集結させている決定的瞬間を見たと証言。報告書の内容にお墨付きを与え、弱みを握られたロシアはさらに追い込まれている。

 昨年、親欧米派の改革によって親ロ派のヤヌコビッチ前政権が崩壊したものの、ウクライナ南東部は親ロ派武装勢力が掌握。ロシアが侵攻を試みているとの疑惑がたびたび報じられてきたが、プーチンはその都度ロシア軍の介入を否定。ロシアのメディアも、NATOや欧米諸国が提示する証拠を偽りの情報だと一蹴してきた。

 だが、ネットを含む公開情報を基に作成された今回の報告書、「ありふれた風景に隠されたウクライナにおけるプーチンの戦争」は、ロシアの嘘を暴いた。

ロシア自身も「情報提供」

 例えば、ウクライナとの国境付近にあるロシアの町、クイビシェフとパブロフカは、昨年夏を境に軍事拠点と化していた。

 グーグルアースとグーグルマップを使った衛星写真で比較すると、13年時点では平凡な農地にしか見えなかった同地域が、ウクライナで反ロシア派によるデモが激化した後には道路や軍事基地が整備されていたことが目視でも確認できる。

 さらに昨年末頃になると、軍事拠点の拡大が明らかになった。ウクライナ国境から数百キロも離れたロシアの農村地帯にも装甲車が並び、軍の訓練施設とみられる建物が造られた様子が写し出されていたのだ。

 皮肉なことに、今回の報告書にはロシア側から発せられた情報も貴重な証拠として提示されている。ウクライナの国境地帯に残る爆撃跡を捉えたロシア国営放送の映像を基にした分析結果を見ると、ロシア側から209発もの迫撃砲が撃ち込まれていたことも確認された。

 報告書の執筆者の1人であるジョン・ハーブスト元駐ウクライナ米大使は、「誰でも利用できるオープンソースとGPSの位置情報によって、相当規模のロシア軍がウクライナ国境付近に集結していることが示された」と説明し、ロシア政府による軍事介入が事実であることを指摘した。「ウクライナでは今なお、同国人同士の戦闘が続いていると思われているが、それは間違いだ」

 ロシアによるウクライナ侵攻はロシア政府のプロパガンダによって隠蔽されることも多い。今回の報告書はそうした行為に大きな歯止めをかける効果も狙っている、とハーブストは言う。「ロシア語も含めて、複数の言語で私たちの所見を発表していきたい」

 これまでの嘘を暴かれたプーチン。どこまでしらを切り続けるつもりなのだろうか。

[2015.6. 9号掲載]
ダミアン・シャルコフ

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