チェコ語翻訳者が語る、村上春樹のグローバルな魅力
ニューズウィーク日本版 / 2015年6月29日 19時50分
チェコの読者からよくある反応が、「これは本当に日本の作品なのか?」「日本文化の要素がまったくない」というものだ。川端康成や三島由紀夫の作品のような、いわゆる伝統的な日本が描かれている作品を期待している読者は、少しがっかりするかもしれない。私自身は日本的な要素が描かれている、立派な日本文学だと思っているが......。
ただし、彼自身については日本の作家というよりも、自分で新しいスタイルを作り、強いインパクトを与えて世界で通用している、世界的な作家だと言える。
たとえば『ノルウェイの森』について、ロシア人と中国人とフランス人が共通の話題にすることができる。このように多くの言語に同時に訳され、世界中に多くの読者がいることは本当に驚くべきことだ。
――あなたは1976年生まれだが、日本および日本文学との出会いは?
『アステイオン82』の「世界言語としての英語」特集にも書いたが、私は「鉄のカーテン」に閉ざされた社会主義時代のチェコスロバキアに生まれた。一般市民が外国に行くチャンスはほとんどなかったため、「外の世界」を知る手だてはテレビや本、博物館などしかなかった。
私の両親が美術関係の仕事をしていた影響で、博物館にはよく行く機会があったのだが、中学生の頃にそこで江戸時代の日本の展示を見て、日本に関心をもち始めた。その後、「鉄のカーテン」は取り払われ、チャンスがあれば日本について学びたいと強く思うようになり、カレル大学日本学科に入学した。
大学時代に先生に勧められたのが村上春樹の『羊をめぐる冒険』だった。当時のチェコでは名前も聞いたことのない作家だったので、大学図書館で借りた英語版で読んだ。私はたちまちその世界に引き込まれていき、卒業論文は「村上春樹の世界における光と影の比喩」にしたほどだ。
――翻訳を始めたきっかけは?
2001年、チェコの出版社が村上春樹作品の翻訳者を探すために、私が在籍するカレル大学日本学科に問い合わせをしてきた。聞いたこともない日本人作家の研究をしているということで私はすでに学内では知られていたのだが、「村上春樹の研究をしている学生がいる」と指導教官に出版社を紹介され、そこから私の翻訳家人生が始まった。
ちなみにチェコ国内に村上春樹の翻訳者が2人いるという話を最初にしたが、もう1人は私の大学時代の先輩だ(笑)。
――翻訳の難しさとは?
谷崎潤一郎の『武州公秘話』を訳して出版社に持って行った際、「こんな難解な翻訳では困る。やり直してほしい」と言われた。作品の中の戦国時代の日本語の会話を、チェコ語でそのように訳しただけだったのだが......。
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