座りっ放し勤務が寿命を縮める
ニューズウィーク日本版 / 2015年7月7日 19時4分
添加物だらけの加工肉に喫煙、大気汚染......。これらが健康を害する大きな要因なのは今や常識。ところがここに、日々の生活で当たり前の行為が加わることになった。座ることだ。
平均的な事務仕事の会社員は毎日、7〜10時間以上を椅子に座って過ごす。問題は、科学的根拠に基づいて「寿命を縮める要因」と認められている数々の習慣(トランス脂肪酸の過剰摂取や喫煙など)と同じくらい、座ることが危険だと示す研究が次々と出てきていることだ。
長時間背もたれに身を預けることは、深刻で慢性的な健康問題を引き起こす可能性がある。例えば......。
■心臓病 座ることが心臓血管系に悪影響を及ぼすという科学的証拠は、1950年代から存在した。イギリスの研究者たちがロンドンのバス運転手(座る仕事)のグループとバス車掌(立つ仕事)のグループの心臓病罹患率を比較したところ、心臓発作やそのほかの心臓疾患の割合は、運転手が車掌の2倍近く高かった。
長時間座っていると筋肉の脂肪燃焼量はより少なくなり、血流もより不活発に。そのため脂質の塊が心臓の血管に詰まりやすくなる。高血圧や高コレステロールになる可能性も高い。1日当たり8時間以上座る人は4時間以下の人に比べ、心疾患になるリスクが2倍以上だ。
■糖尿病 私たちの体は血液中のブドウ糖(血糖)をエネルギーにして動いている。全身の細胞にブドウ糖を届ける役目をするホルモンが、膵臓で作られるインスリンだ。運動不足が続いて使われない筋肉はインスリンの刺激を受けにくくなって、ブドウ糖の取り込み能力が低下。血糖が下がらない状態が続く。これが糖尿病などの病気につながる可能性がある。
08年のある研究では、日中長時間座っている人は空腹時血糖値が著しく高いことが分かった。つまり、インスリンがうまく働いていないということだ。11年のある研究では、ほんの1日、長時間座っていただけで、インスリンの作用が低下することが分かった。
■癌 乳癌と結腸癌は運動の有無に何より影響されると考えられる。アメリカの11年の研究によれば、全米で運動不足が原因で新たに乳癌に罹患したとみられる患者は年間4万9000件、結腸癌は4万3000件に上ったという。
座ることで癌のリスクが高まる根本的なメカニズムはいまだ明らかになっていないが、研究者たちはいくつかのバイオマーカー(健康状態を判断するための指標)を発見している。例えばC反応性タンパクの数値は、長時間座っていると高くなる。こうした物質が癌の発生と何らかの関わりがあるかもしれない。
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