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座りっ放し勤務が寿命を縮める

ニューズウィーク日本版 / 2015年7月7日 19時4分

 反対に、適度な運動が抗酸化物質を増やし、フリーラジカル(活性酸素)を減らす可能性も指摘されている。フリーラジカルは、細胞やDNAにダメージを与え、老化を加速させるとされている物質だ。

立つのと座るのを半々に

 こうした研究結果が明らかになるにつれ、人気が高まっているのが「立ち机」。「座るのは大きな過ちだった。健康への悪影響は50年前から分かっていた」と、英コンサルティング会社アクティブ・ワーキングCIC設立者のギャビン・ブラッドリーは言う。「立った姿勢を基本とするか、座った姿勢を基本にするかの問題だ」

 では、1日にどのくらい立っていれば健康で働き続けられるのか。学術誌ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスンに最近発表された研究は、勤務中に毎日少なくとも2時間は席を立ち、いずれは立つ時間を4時間以上に延長するよう呼び掛けている。

 研究を主導したチェスター大学のジョン・バックリー教授(応用運動学)らは、2時間が健康の「分岐点」になると言う。2時間を超えると、立っている時間が1時間増えるごとに病気や死亡のリスクは軽減される。

「立って仕事をすることの利点に注目が集まっている今だからこそ、いつ、どうやって実行すれば効果的なのか、実用的なガイドラインが求められている」と、バックリーは言う。

 座って仕事をする習慣に「立ち向かう」ためには、企業文化を変える必要がありそうだ。立ち机を採用するだけでなく、経営者自ら重要会議で椅子を撤廃する覚悟が必要かもしれない。

 既に立ち机を使っている場合でも、1日何時間立てばいいのか多くの人が分かっていないと、バックリーは指摘する。その上、同じ場所に長時間立ちっ放しでいるのは苦痛で疲れるし、生産性も低下する。究極的には、立つ時間と座る時間を半々にすることが指標になるという。

生産性の向上にも効果

 立つことはビジネスパーソン本人の健康に影響するだけではない。従業員の医療費を削減し、企業の医療保険料負担を軽減することにもつながる。

 米厚生省が職場での健康維持プログラムの影響を調査したところ、立ち机の使用や体を動かすなどの項目が含まれるプログラムを導入した場合、従業員の医療費を削減できたと60%の経営者が回答。約80%は従業員の欠勤が減ったり、生産性が向上したりするなどの成果が見られたという。

 これまでに「立ち文化」を採用した米企業には、ジョンソン・エンド・ジョンソンやシェブロン、マイクロソフトなどがある。
仕事はじっと座って集中してこなすもの──そんな常識を打ち破るために、そろそろ立ち上がる時かもしれない。

[2015.6.30号掲載]
ジェシカ・ファージャー


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