日本経済の真の課題 前半
ニューズウィーク日本版 / 2015年7月21日 19時0分
スパイラル的に経済が悪化するのは、1930年代の大恐慌のとき、あるいはせいぜい、リーマンショック後のことであり、現状では、日本経済はまったくそのような状況にない。
むしろ問題なのは、将来の展望が開けないこと、今後、経済は停滞を続け、人口減少とともに右下がりである、という悲観的な見通しである。
それがデフレマインドだ!というのは自由であるが、それならば、そのデフレマインドは物価とは無関係だ。物価が上がろうが下がろうが、インフレ率が2%になろうが、なるまいが関係ない。問題は、将来に希望がもてるか、将来が不安ではないか、ということだ。
物価が上がれば将来の不安がなくなるなら、物価を上げれば良い。しかし、1970年代のオイルショックでも明らかなように、人々は異常なインフレに対して、節約で対応した。すべてモノにしておくのではなく、将来どうなるか分からないから、将来に備えて、消費を減らして、貯蓄を増やしたのである。現在も同じだ。誰も、インフレになったから喜んでモノを買うわけではない。一部の円安による輸入品の高騰に対して、富裕層が高額ブランド品を先に買っておいたり、投資として、不動産や株を買っておいたり、住宅ローンをめいっぱい組んでおいたり、するだけのことである。
それはいいことなのではないか?という誤った議論が聞こえてきそうである。これが需要対策、景気対策になり、経済にとってはいいことではないか、と思う読者もいるだろう。それは、間違っているか、間違った経済学を学んだか、どちらかだ。
彼らは、それらを購入した後どうするだろうか? 正確に言うと、彼らの消費総額、人生における消費総額は変わるだろうか。変わるはずがない。値上げ前に輸入車やブランドモノのバッグを買えば、値上げ後には買わない。消費税の駆け込み需要の反動減と同じだ。トータルでは変わらない、いやむしろ下がるのだ。下がるのは、値上げ後に、買いたくなったときに、値上がりしているのを知ったら、値上げ前に買わなかったことを後悔し、自分が愚かであるとは思いたくないので、消費の欲望の方を抑えてしまうから、トータルで消費は減る。住宅も同じで、いつか家を買おうと思っていたのが、踏ん切りがついただけだから、誰も将来は家を買わない。安いから、今のうちに家を二軒買っておこうという人はいない。
アベノミクスの最大の功績は資本市場を鬱から救ったこと
しかし、実は、いる。そういう人はいるのだ。ただし、日本国内ではなく、海外にいる。投資家達だ。円安で40%引きとなった、日本の優良不動産を買い漁っている。2億、3億のマンションや、1億のマンションを5戸まとめてとか、投資目的で買っている。円安の今がチャンスだ、ということだ。
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