「安保法制」の落とし所はどこにあるのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2015年7月28日 16時0分
過去には、「憲法改正は内閣の課題にはしない」とした小泉純一郎政権の前例もあることですし、憲法改正を党是とする自民党ではありますが、問題はないと思います。
また、安保法制や集団的自衛権を合憲だとするのは、「解釈改憲が過ぎる」とか「立憲主義の否定だ」という意見もありますが、9条が消えてしまうとか、国軍創設などという話になるぐらいなら、解釈改憲を重ねながら条文を歯止めとして変えずに残すというのも「アリ」ではないかと思うのです。
例えば改憲論者は、結婚は「両性の合意に基づく」という条文では「同性婚の合憲化」ができないなどと、色々な部分を「改憲への突破口」にしようとしています。この点に関しても、戦前にようにお互いに自由に相手を選べない家族制度ではなく、当事者の「双方が対等に話し合って合意する」というのが日本国憲法の婚姻条項の精神なのだから、「同性間でも有効だ」というような「解釈改憲」などは大いにやったらいいのです。
いずれにしても、このままでは野党や反対派世論は「安保法制は憲法違反」だから「堂々と憲法論議をして改憲案も葬ってやる」という立場ですし、政権与党の特に自民党としては「安保法制は合憲だから改憲は不要、だがそれとは別に悲願である改憲は実行したい」という立場であり、これでは全く重なる部分がありません。
こんな左右対立は、例えば高度成長期には何らかのエネルギーになったかもしれませんが、難問の山積している現在においては消耗でしかありません。この状態を打開するためにも、1つの思考実験をしてみてはどうかというのが今回の提案です。
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