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日本の成人の「生涯学習」率は先進国で最低

ニューズウィーク日本版 / 2015年8月4日 16時30分

 現代社会は変化のスピードが速い。学生時代に学校で学んだ知識や技術はすぐに時代遅れになってしまう。だから本来なら、学校を出た後も学習を継続する必要がある。まさに「生涯学習」が求められる時代だ。

 図書館で自習したり、社会教育講座や技能講習を受講したりと、生涯学習の形式は様々だが、学校に通うという方法もある。学校は子どもや若者の占有物ではなく、制度上は成人にも門戸が開かれている。日本では成人学生は少ないが、世界に目を転じればそうでない国もある。

 経済協力開発機構(OECD)が2012年に実施した「国際成人力調査(PIAAC 2012)」では、各国の成人に「現在、何らかの学位や卒業資格の取得のために学習しているか」と尋ねている。下の<図1>は、30歳以上の成人のうち「イエス」と答えた者の割合を国別に出し、ランキングにしたものだ。アメリカ、ドイツは年齢を調べていないので、比較対象から外している。



 日本は1.6%とランキング18カ国の中で最も低く、学校で学ぶ成人が最も少ない。最高はフィンランドの8.3%で日本のおよそ4倍。上位は北欧の国々で占められている。大学開放(University Extension)の発祥の地であるイギリスをはじめ、上位国では教育有給休暇や学費の無償化など、成人が「学び直し」できる制度が整っている。

 日本は「教育大国」と言われているが、それは人生の初期に限った話で、生涯のスパンでみるとそうではない。それは、学校に通っている者の割合の年齢グラフを見るとよく分かる。<図2>は、日本とフィンランドの年齢カーブだ。



 日本は10代では高いが、その後急落し、20代後半以降では地を這うような推移になる。対してフィンランドは曲線の傾斜が緩やかで、30代でも2割ほどが何らかの形で学校に通っている。「生涯学習社会」の実現度の差が、色の面積で可視化されている。

 もちろん学校に通うのは生涯学習の1つの形式に過ぎない。日本で充実しているのは企業内教育(実務訓練)だろう。雇用の流動性が低く、それぞれの企業が従業員を自家育成するので、外部の教育機関へのニーズは低い。成人の通学率が低いのは、こうした事情にもよる。

 しかし「OJT(On-the-Job Training, 職場での実務トレーニング)」では、他の組織でも通用する汎用性のあるスキルを身に付けるのは難しい。日本でも、長期雇用の慣行は徐々に崩れ、社会人が自分のスキルを売りにして複数の組織を渡り歩く雇用形態が徐々に広がっている。その際には、企業内での閉じた「OJT」だけでなく、そこから離れた「Off-the-Job Training」の必要性も高まる。

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