チェ・ゲバラから「ピッチ」の秘訣を学ぶ
ニューズウィーク日本版 / 2015年8月26日 18時30分
ウィンストン・チャーチルはもちろん、人と違うことを恐れなかった。大きな葉巻を常に口にくわえ、午前中はずっと眠り、夜通し働いて、バスタブに横になりながら重要な軍事機密文書を秘書に口述したばかりか、常人が一生かけて飲むほどのシャンパンを一週間で飲み干していた(これを戒めてベシー・ブラドック議員が「チャーチルさん、酔っていますね!」と言うと、彼が「いかにも、マダム。それにしてもあなたは不細工ですな。私の酔いは明日には覚めますがね」と答えたのは有名な話だ)。
ゲバラとカストロはたった数人の仲間と組んで、世界最強の国家であるアメリカからキューバを解放した。これほどまでに人と違う個性的な人間はいないだろう。
こうした非凡な人々はすべて、人と異なることを恐れない勇気の持ち主だ。社会が望むとおりではなく、自らが望むとおりに行動している。そこに彼らのカリスマ性がある。人は誰でも他から期待されることではなく、自ら望むことをしたいと思っているが、結局は突き進む勇気を持てずに順応する。それに引き換え、カリスマ性を持つ人は我が道をゆくのである。
彼らは、その歩みを楽しんでいる。それがカリスマ性のもう一つの秘訣である。ダリの芝居じみた言動を楽しむ人がいようといまいと、彼自身がそこに大いなる歓びを見出していたのは間違いない。ウォーホルもまた、自ら生み出した周囲の注目の渦中にいることを好んでいた。チャーチルも戦況悪化の中で挑戦を楽しんでいたようだし、悪化すればするほど強靭になっていった。より最近の政治家の例では、ビル・クリントンは偉大なカリスマ性の持ち主だろう。クリントンは不利な局面に立たされたときでも、責任を負うことを楽しんでいた。それとは対照的に、ジョージ・ブッシュは親子いずれも、張り詰めた顔をしていて喜びが感じられない。
もちろん、シャンパン一本と葉巻をひと箱買えばチャーチルになれるわけではないし、ヒゲをワックスで固めて狂おしいほどの自己愛をもったところでダリになれるわけでもない。だが、そうしたカリスマを真似できなくても、そこから教訓は学べるのだ。
こうした非凡な人々が私たちに教えていることは、自信というものは素晴らしいものであり、社会の慣習ではなく自らの本能に従ったからこそ幸せになれた、ということなのである。
※抜粋後編「経営コンサルタントはすぐに解雇しなさい」はこちら
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