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なぜバンコク爆発事件でウイグル族強制送還報復説が浮上しているのか

ニューズウィーク日本版 / 2015年8月31日 12時10分

 8月17日夜、タイの首都バンコクの「エラワン廟」と呼ばれるヒンズー教の神を祭った祠の前で爆発が起き、20人が死亡、120人以上がけがをした。現場は外国人が賑わう繁華街であったため、多くの外国人が犠牲となり、マレーシアやシンガポールの華人の他、中国人5人、香港人2人が亡くなった。

 ここ数年、中国人による海外旅行の急増にともない、タイは特に人気のある旅行先になっていた。近くて物価が安いことから、中国の低中所得者層は初めての旅行先としてよくこの国を訪れる。多くの先進国がいまだに厳しいビザ取得条件を課すなか、東南アジア諸国は競うようにして中国人旅行者向けのビザ要件を緩和しており、タイでは空港でビザ取得が可能だ。

 2012年末に中国で公開された、タイを舞台としたコメディ映画『人再囧途之泰囧』(英題Lost in Thailand)が同国の歴代興行収入を更新するほどの好評を得ると、タイ旅行が一層のブームになった。タイ経済の約10%を占める観光業のなかにあって、中国人旅行客数は全体の5分の1に迫るなど突出しており、昨年は460万人の中国人がタイを訪れた。

 2014年のクーデターで軍事政権が誕生して以来、タイは中国との関係を深めてきた。その蜜月ぶりは、8月はじめにクアラルンプールで開催されたASEAN地域フォーラムで開かれた両国外相による共同記者会見でも垣間見れた。2人はその場でプレゼントを交換すると、タイのタナサック・パティマプラゴーン副首相兼外相(当時)が今の両国関係はこれまでになく良好だと指摘し、「もし私が女性だったら、殿下(注:中国の王毅外相)と恋に落ちてしまっただろう」と述べた。

 そんな良好な両国関係を背景に、タイ軍事政権は7月、イスラム教徒のウイグル族109人を中国に強制送還し、国際社会から非難を受けた。その後、中国国営のCCTV(中国中央電視台)が、これらウイグル族の人々が送還される際に飛行機内で頭から袋のようなものを被せられ、警察官の横に一対一で座らされている映像を放映した。まるで犯罪者を移送するかのようなこの画面は波紋を呼んだ。

実行グループとトルコ極右組織のつながり?

 先週末になってようやく容疑者1人の身柄が拘束されたが、今回の爆発事件の詳しい動機は記事執筆時点の今も不明だ。事件後、警察が十分に現場を検証せずに道路を再開させたり、事件の解決が運しだいだと発言したり、またタイ軍事政権が早々と国際テロ組織が関わった可能性を排除したりしたことに批判の声が上がっていた。

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