遺伝子組み換え技術への不安に応える──食糧増産を目指すモンサント
ニューズウィーク日本版 / 2015年9月8日 15時0分
写真:日本モンサント山根精一郎社長
農業サービスを提供する米国企業モンサント・カンパニーは、世界の食糧生産に深くかかわる。同社の提供する農薬、そして遺伝子組み換え作物に対して、不安を感じる人も多い。どのような取り組みをしているのか。日本モンサントの山根精一郎社長に聞いた。
世界の食をめぐる環境は厳しい。現在約70億人の世界人口は2050年には90億人を突破すると見込まれる。人口を支えるために穀物が不足する可能性が高い。同社の企業ビジョンは「世界の「食糧増産」と「環境保全」に貢献すること」。食糧問題を、農業技術で解決することを目指す。
「仕事が社会の役に立つ喜び。そして問題解決のために知恵を出し合う自由で合理的な社風」。山根社長(67)は同社の企業文化を語った。植物病理学で農学博士号を取得した後で1976年に日本モンサントに入社し、2002年から社長を務める。
消費者にメリットが見えにくい遺伝子組み換え技術作物
モンサントの製品は、育種、バイオテクノロジー、農薬、生物製剤、栽培方法(精密農法)の5つの技術基盤から成る。このうち、日本モンサントの現在の仕事の中心は、同社製の種子やサービスを使った作物が流通できるように、安全性の認可手続きを日本政府に行うことだ。その大半はバイオテクノロジー(遺伝子組み換え技術)を使った作物になる。「消費者の皆さんに、不安があることは承知しています。それを解消できるように情報を提供していきます」と山根氏は語る。
普段私たちが食している作物はいずれも人為的に植物の性質を変えて品種改良されたものだが、このうち遺伝子組み換え技術は、交配など従来の育種技術では成しえなかった害虫に抵抗性を持つ、除草剤を散布しても枯れないで雑草だけを効果的に枯らせる...などの特性によって、収穫量の増加、農薬使用量の削減、農作業の手間やコストの削減など、生産性向上の効果が高い。「遺伝子組み換えのメリットは、日本の消費者の目には見えにくいですが、そうしたメリットを知ってほしい」と山根氏は語った。
英農業調査会社PGエコノミクスによれば、遺伝子組み換え作物を使うことで、2012年に世界で188億ドル(2兆2500億円)の農業所得の向上があった。その半分が開発途上国でのものだ。またこの種の作物で収穫量の増加は1996-2012年に大豆で1億2200万トン、トウモロコシが2億3100万トンだった。日本の国内消費が大豆で年約300万トン、トウモロコシで年1500万トンであることを考えると収増量の増加は大変大きい。「世界の食糧不足が懸念される中で、海外から穀物を調達する日本は、量を確保することを真剣に考えなければなりません。収穫量を増やす手段の一つが遺伝子組み換え作物なのです」と、山根氏は強調した。
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