オバマと習は中国経済を語らず
ニューズウィーク日本版 / 2015年10月19日 14時16分
こう書くと地味に聞こえるかもしれないが、これ以上ないほど重要なテーマだ。信頼できる情報がなければ、適切な政策を立案することも、一般市民と市場から十分な支持を獲得することもできない。
実際、当局が最も根本的なレベルで国民と外国人投資家の信頼を欠いていると、経済の破綻につながることがしばしばある。最近の数カ月間で、中国に対する国内外の信頼は急落した。
中国当局にとって、この反応は理解できないものだった。私は長年、多くの国でこのような事態を何度も目の当たりにしてきたが、この問題の深刻さをしっかりと認識している指導者は驚くほど少ない(新興国だけでなく、先進国でも同様だ)。実際、現在の中国指導部が直面している問題の核心にあるのが、この信頼性の欠如だ。
第2に、中国の経済モデルはいくつかの矛盾をはらんでおり、中国の世界経済への統合が進むにつれて、矛盾の多くが浮き彫りになってきている。
際立った矛盾の1つは、株式市場に対する中国政府の姿勢だ。この10年ほど中国政府は社会の幅広い層に株式投資を行わせようとしてきたが、中国の株式市場は「市場」とは名ばかりで、市場としての実質を十分に伴っているとは言えない。
株式相場を下支えするために当局が露骨な介入を行えば、投資家たちに合理的な行動を取らせるインセンティブが機能しなくなる。極めて特殊な状況に限定して、破綻の危機に瀕している金融機関など個々の企業を個別に救済するのはまだしも、「大き過ぎてつぶせない」という理由で株式市場全体を救済しようという発想は、正当化できる余地がほとんどない。
ところが、この点の線引きが明確になされていないために、投資家たちは、中国当局による救済を当てにして非合理なほどリスクの大きな投資に走る。その結果、中国の株式市場に対する信頼が大きく損なわれてしまっている。
世界経済最悪の悪夢とは
これに輪を掛けて深刻な矛盾は、政府が消費主導の経済への転換を目標に掲げている一方で、現実には資本投資に回される資金の割合が増えていることだ。特に、慢性的に赤字を垂れ流している国有企業を支えるために莫大な資金がつぎ込まれている。
中国指導部は、13年11月の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)以来、市場が「資源の分配において決定的な役割」を担うべきだとの方針を繰り返し強調しているが、実際に取ってきた行動は正反対だ。中国のGDPに占める投資の割合は約46%で、10年以降まったく減っていない。
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