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【マニラ発】中国主導のAIIBと日本主導のADBを比べてわかること

ニューズウィーク日本版 / 2015年10月23日 16時25分

 当初、日本側は日本人の総裁就任に加えて、東京に本部を置くことを当然視していた。しかし、18の域内メンバーによる民主的な投票の結果、ADB本部の設置場所はマニラに決まった。1回目で東京選出を決めるという目論見とは裏腹に、1回目の投票で東京は過半数を得ることができず、テヘラン、マニラとともに2回目の投票へ。その結果、テヘランが脱落、3回目の決選投票でフィリピン9票、日本8票という大逆転が起きた。フィリピンはこれに遡ること2年前から水面下で誘致に向けて動き出しており、投票間近には、当時のマルコス次期大統領が活発にロビー活動を繰り広げていた。

 だが、本部が東京に置かれなかったことは、日本政府のADBへの影響を制限するという意味で、ADBが真に国際的な銀行になることに貢献した。一方、AIIBの本部は中国・北京の金融街に位置することがすでに決まっているが、どこまで中国政府の意向に影響されず運営できるかは未知数だ。

ADBには「野党」アメリカがいるが、AIIBはどうか

 日本がADBに大きな影響力を及ぼしていることは言を待たないが、ADBが全くもって「日本の銀行」であるというわけではない。朝日新聞の報道によると、ADBが資金協力した工事などの契約を日本企業が受注した割合は、0.21%(2013年)にすぎず、中国企業の受注率20.9%に遠く及ばない。

 日本とアメリカがそれぞれ出資比率15.7%と15.6%を占め(2014年末現在)、ADBの二大出資国となっている(議決権はそれぞれ12.8%と12.7%)。前アジア開発銀行研究所長、現・東大教授の河合正弘氏によると、アメリカはADBの組織的非効率性を指摘したりと、組織内で長年「野党の役割」を果たしてきたという。さらに、日本はADBを使って独自の目的を達成するというよりは、アジアの国際公共財(筆者注:国際的に利用可能な財やサービスを意味する)を提供してきた、と河合氏は分析している。

 それに対し、中国のAIIBに対する出資比率は30.34%(議決権は26.06%)に上り、現時点で一定の拒否権を確保しているため、「中国の銀行」になるおそれが拭いきれていない。また、途上国・新興国の出資比率はADBで40%以下である一方、AIIBでは70%に達し、ヨーロッパ各国の意見が単独では反映されないため、AIIBの成否を懸念する見方がある。例えば、アフリカ開発銀行は当初、地域内メンバー、つまり途上国にしか開かれていなかったが、運営がうまくいかず、結局多くの先進国を受け入れることになった。

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