「名前はまだない」パレスチナの蜂起 - 酒井啓子 中東徒然日記
ニューズウィーク日本版 / 2015年10月27日 15時20分
この、名前がまだない蜂起に、国際社会は何か解決策を提示できるだろうか。イスラエルとパレスチナ、ヨルダンとの協議を終えたケリー国務長官は、「事態の鎮静化に向けて、新たな措置を取ることで合意した」と述べた。だが、PLOもハマースも知ったことかとするパレスチナの若い世代や、国家をのっとらんばかりの勢いのイスラエルの入植者といった、本当の蜂起の当事者にこの「合意」が届くだろうか。
むしろ、蜂起の根幹には、当事者の声を掻き消してきた国際社会や域内諸国へのあきらめがある。この間、周辺アラブ諸国はISやシリア内戦にかまけて、パレスチナに耳を傾けてこなかった。それどころか、いまやイスラエルと湾岸アラブ産油国の接近は、公然の事実である。湾岸首長国が保有する航空会社は、堂々とイスラエル領海上空を飛行する。自由シリア軍らしき負傷兵士が、ゴラン高原を経由してイスラエルで治療を受ける。
「周辺諸国が自国の利害にかまけていたからこそ、パレスチナ問題でイスラエルを利する形になったんじゃないか」、と批判するアラビア語紙もないではない(ヨルダンのドゥストゥール紙やレバノンのムスタクバル紙など)。だが一方で、サウディアラビア資本の英字紙「アラブ・ニュース」は、言う。「暴力では解決しない、インティファーダは必要ない」(10月15日)。「インティファーダは必要ない」なら、解決のためにアラブ諸国や国際社会が何をしてくれるのか? その回答がない限り、蜂起は終わらない。
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