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コーヒー、アルコール、喫煙、肥満......脳によくないのはどれ?

ニューズウィーク日本版 / 2015年11月12日 16時45分

肥満と認知力

 体重と認知力との関連性は本質的なところであきらかになっていない。これを探った研究は数が少なく、結論に至っていないからだ。肥満とアルツハイマー病になるリスクとの関連性についても相反する結果が報告されている。あるものはリスクが増加するとし、あるものはリスクが減少するとしているのだ。たぶん、体重が認知力に与える影響は小さいのだろう。この相反する結果を生む別の要因として、被験者が太り過ぎになったときの年齢も問題になるだろう。

 体重という指標では、認知症になるリスクを矛盾なく予測することはできないことを示す研究もある。高いBMI(肥満度指数)が、若い頃は認知症になるリスクを増加させるが、晩年になると減少させるからだ。この結果に関しては、晩年における体重減少は、(リスク要因ではなく)認知症の初期症状ではないかとする指摘がある。

 最近行なわれた38に及ぶ研究の再調査も、中年期の肥満と晩年の認知症には関連性がないとする。同じ研究は一方で、肥満と認知力そのものとの間には関連性があるとする。肥満している人は、いわゆる実行機能、つまり、計画力や推理力、問題解決能力などが低い傾向にあるからだ。実行機能の低下は食習慣を乱して体重増加につながりやすい。また、体重が増加すると、生物学的なメカニズム(炎症、脂肪の増加、インスリン抵抗性)を通して次々と脳に悪影響を与えるだろう。しかし、肥満したから認知力が低下するのか、認知力が低下したから肥満するのか、その因果関係はわかっていない。

 好ましい行動指針は、どちらか一方を選ぶのではなく、肥満と認知力の両方に注意を払うことである。これは、この本の主要テーマにつながっていく。万能薬を使った解決を期待するより、認知力に影響を及ぼす主な要因に効率よく取り組むほうが、意味があるからだ。

まとめ

●脳は全体重のうちの2%しか占めていないが、全体の25%のグルコースを消費している。エネルギー要求量がとてつもなく大きい器官であり、認知機能の良し悪しに私たちが食べたものが影響することを示す理由のひとつになっている。

●栄養素が脳に与える影響は、短期間(エネルギーが急増し、その結果、よく脳が働くようになる)だが、長期間に及ぶ場合もある。たとえば、地中海食(野菜、フルーツ、シリアルをたくさん、魚は適度に食べ、アルコールも適度に飲む、乳製品と肉類は少なくする)に忠実に従っていると、認知力が低下するリスクと認知症になるリスクを減らす。

●健康的な人が、安全かつ効果的に認知力を向上させるサプリメントは確認されていない。ふだんの食のあり方がなによりも大切だ。




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