1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

不都合や不便を感じるデザインでは、もう生き残れない

ニューズウィーク日本版 / 2015年11月17日 19時45分

 すでに単なる形や色など見た目のデザイン要素だけがプロダクトの売れ行きを左右する時代は終わっています。もっと本質的な要素を含み、プロダクト一つに企業のスタンスまで表現させたもの、整った外観だけで終わらないものが求められています。多くの企業がこの事実に気づき始めて開発手法を見直すようになりました。

 私が提唱している「行為のデザイン」は、そんな新しいニーズに応えられる効果的な開発メソッドです。

「行為のデザイン」とは、対象をモノだけに絞らず、人や情報、環境を含んだ中で「行為がスムーズに美しく振る舞われるためにどうあるべきか」を考えるデザインです。だからまずユーザーが目的を達するための動き・行為に着目します。もし利用中に動きが止まるのであれば、それは利用法がわからないとか、いったんやめて戻らなければいけないなど、プロダクトに「バグ」があるということです。

 使う途中で不都合や不便を感じるプロダクトは、口コミ評価をインターネットで検索できるこの時代では生き残ることは難しいでしょう。しかし「行為のデザイン」を経ればプロダクトを開発する段階でそれらユーザーの行為を止める「バグ」を事前に発見し、解消することができるのです。

 たとえば、会議室のような広い部屋の照明をつけようとして、スイッチで迷ったことはありませんか。壁に六つや八つのスイッチがあり、ユーザーは天井の照明と対応しているのだろうと想像できても、どっち側がどの照明と対応しているのかわかりません。「前をつけて」と言われたのに後ろをつけてしまったり、残したい照明を消してしまうような失敗は皆さんにも心当たりがあるはずです。

 このときのユーザーの行為は、あたふたして照明とスイッチを見比べ、いくつか間違えながら照明をつけたり消したり、周囲の人に謝ったりする、あまり美しくない所作になっています。

 この状況の原因は、認識のしにくさです。建築の用語では天井の方向を天伏(てんぶせ)といい、壁の方向を立面といいます。ユーザー目線で考えると、これは立面にある照明スイッチに天伏の情報が九〇度角度を変えて移動しているので混乱を招くのです。仮にスイッチに番号が振ってあったとしても情報の角度が変わるだけで大幅に認識しづらくなります。

 このときデザインが担うべきは美しいスイッチ盤やつまみの色ではありません。情報をどう見せるとユーザーが行動を止めずにすむか、美しく振る舞えるのかを考える「行為そのもののデザイン」です。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください