アリババが香港英字紙買収――馬雲と習近平の絶妙な関係
ニューズウィーク日本版 / 2015年12月14日 17時15分
今年6月、政府批判もしていた第一財経の株を取得したアリババが、今度はやや民主的な香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストを買収。馬雲の仲間の郭広昌は消息不明に。馬雲の目的は何か?習近平との関係は?
サウスチャイナ・モーニングポストの買収は何を意味するのか?
12月11日、中国の電子商取引最大手のアリババが、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポスト(南華早報)を買収した。
サウスチャイナ・モーニングポストはイギリス占領時代の1903年に設立された英字新聞で、創設時はまだ清王朝時代だったため、「南清早報」という中国名を号していた。1912年に「中華民国」が誕生すると「南華早報」に改名し、現在に至っている。
中文版もあり、中英文ともウェブサイトがある。
政治的立場としては、激しい中国政府批判はしないものの、やや民主的で、昨年の雨傘革命のときには「普通選挙」を支持する報道をしたこともある。そのため中国の国家的ネット検閲機関である「防火長城(万里のファイヤーウォール、Great Fire Wall)」により中英文ウェブサイトとも完全に遮断されて、中国大陸のネット空間では見ることができなくなった。
解禁されたのは今年の9月になってからだ。しかしなお、「港澳台(香港、澳門、台湾)」に関する報道は大陸では封鎖されたままである。
そのサウスチャイナ・モーニングポストをアリババが買ったのだ。
それは何を意味するのだろうか?
実は今年6月にも、アリババは「第一財経日報」およびその系列のウェブサイトなどに対して、30%の株を取得して発言権を獲得している。表面上は「ビッグデータ処理」など、ビジネスが目的だとしているが、実際は違う。
第一財経のウェブサイトが発信する情報は、中国政府を客観的にではあるが、ときには堂々と批判することもあり、とても中国大陸のウェブサイトとは思えないような大胆さがあった。
ということは、どうもアリババは「民主化的傾向のあるメディア」あるいは、ともすれば「中国政府を批判する可能性のあるメディア」を、次々と買収したり大株主になったりして、その発信内容をコントロールしようという意図があるように見える。
特にサウスチャイナ・モーニングポストは、2013年7月に馬雲をインタビューした記事を4日連続で掲載したことがある。そのときアリババで起きた不祥事に関して責任問題を問うたとき、馬雲は「六四事件(天安門事件)のときにも鄧小平は国家最高の責任者として決断をしなければならなかった。あの決断(民主を叫ぶ若者を武力鎮圧したこと、筆者注)が正しかったように、最高責任者は毅然と決断をしなければならない」という趣旨の回答をした。この回答をサウスチャイナ・モーニングポストがウェブサイトに載せると、香港の若者たちが激しい抗議を発信し始め、またたく間に大陸のネット空間へと広がっていった。
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