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過去作からの「反復」がもたらす光と影――『フォースの覚醒』レビュー(軽いネタバレあり)

ニューズウィーク日本版 / 2015年12月22日 15時18分

新3部作の序章としては上出来だが、単体としては物足りなさも

(以降は、最新作とシリーズ過去作の内容に触れ、軽いネタバレを含みます)

『フォースの覚醒』の脚本は、エピソード5、6の共同脚本家ローレンス・カスダンとエイブラムスらが担当している。シリーズを通して観てきた人なら、主要キャラクターの配置やストーリー展開が「ルーク3部作」、とりわけ『エピソード4/新たなる希望』に似ていることを容易に感じ取るだろう。ハン・ソロ、ルーク、レイア姫という旧作のトリオは、闘うヒロインのレイ(デイジー・リドリー)、抜け忍ならぬ「抜けストームトルーパー」のフィン(ジョン・ボイエガ)、Xウイング操縦士のポー・ダメロン(オスカー・アイザック)に引き継がれた。かつての宿敵ダースベイダーに相当するのがカイロ・レン(アダム・ドライバー)だ。

 エピソード6から約30年後が舞台ということで、旧トリオのキャスト(ハリソン・フォード、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー)が相応に加齢した外見で再び登場すると感無量だし、ライトセーバーでのチャンバラ、ミレニアム・ファルコンやXウイングでのチェイスやバトルも懐かしさ満点だ。視覚効果技術の進化に伴い、アクションシーンや背景の描画クオリティが格段に向上しているが、宇宙船の外観などはミニチュアモデルを使った特撮風の質感を再現して、旧作のイメージから乖離しないよう配慮している。

 エイブラムス監督は新たな3部作の序章として、シリーズの伝統を引き継ぎつつ、新たな歴史の基礎を築くという大役を果たした。銀河帝国の流れをくむ「ファースト・オーダー」の勢力とこれに対抗するレジスタンスの戦いという大きな構図を示しつつ、新キャラたちを登場させ、古株の合流も無理なく実現させた。

 シリーズのアイデンティティーを保つために過去作からの「反復」は有効だが、『フォースの覚醒』ではそうした反復が短縮された形で登場するので、駆け足の感が否めない。

 たとえば、若きフォースの使い手という意味で旧シリーズのルークに相当する本作のレイは、ジェダイ・マスターに教わることもなく、数回の試行錯誤であっさりフォースを体得してしまう。『エピソード5/帝国の逆襲』でルークがヨーダの下で行った厳しい修行はなんだったのかと思わずにはいられない。「The Force Awakens」という原題も象徴的で、フォースが覚醒する、つまりは(修行して身につけるのではなく)勝手に目覚めることを示唆していたのだ。

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