人権派弁護士の「RTが多いから有罪」判決が意味するもの
ニューズウィーク日本版 / 2015年12月25日 20時10分
中国は厳しい言論統制がしかれている国ではあるが、デモやストライキなどの直接行動を呼びかける書き込みはただちに摘発される一方で、政府批判や風刺はある程度許容する傾向があった。浦志強氏をはじめとする人権派弁護士、活動家はそうした「一線」を熟知し、ネットを利用して人々の注目と支持を集め、政府に対する圧力としてきた。
この状況が変わったのは習近平体制以降となる。今年7月にも200人以上の人権派弁護士、活動家が拘束され、一部が罪に問われる「暗黒の金曜日」事件が起きたが、これもネットの書き込みが問題視された結果だ。
人権派弁護士や活動家に対する裁判で執行猶予がつくことはきわめて稀で、浦志強氏が解放されたことは喜ばしい。浦氏の裁判は世界的な注目を集めてきただけに、中国政府も配慮したものと見られる。しかしその一方で大きな問題も残された。人権派弁護士のつぶやきがリツイート数の多寡で有罪になるとの判例が出たことで、ネットを利用して政府に圧力をかける手法は有効性を失ったのではないか。
中華人民共和国の法律に従い、内側からの改革を目指す浦志強氏らの試みは、本来は政権にとっても歓迎するべきものであったはずだ。きわめて迂遠で可能性が低いものであったにせよ、合法的な手段による問題解決や改革のルートが残されていたことは、体制を批判する人々にとって貴重な希望となってきた。
そのルートが閉ざされれば、あきらめる人もでるだろうが、非合法の活動へと転換する人もでるだろう。この意味において、浦志強氏の裁判はきわめて重大な意味を持っている。
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[執筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
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