路上生活・借金・離婚・癌......ものを書くことが彼女を救った
ニューズウィーク日本版 / 2016年1月27日 16時54分
そして、そこにこそ本書の問題があると私は思う。先に触れたとおりたいへんな半生を送ってきたことはたしかだろうし、真似ができない強さもある。しかしその一方で、絶対的な自己肯定意識、そして相反する自己憐憫が露骨に出すぎているから、なかなか共感しづらいのだ。「まぁ......たいへんだったろうけど......でも、誰でもみんなたいへんだよね」といいたくなるような感じである。
しかし、そのぶん現在の著者が、とてもいい環境に落ち着くことができたらしいことはよくわかる。真言宗の寺に入り、そこで執筆を続けているのだという。
二〇〇九年、春。
偶然の出会いではなく、必然的に、あたしは岐阜のあるお寺に導かれた。そして、自分の人生を多くの人に知ってもらいたいという気持ちになった。(中略)
一度死にたい。死のう。死んで、生き返りたい。
そのためにも、あたしは自分の過去を書こうと決めた。いや、これ以上ここにいるためには、書かずにはおれなかったからだ。(270ページより)
少女時代から街を放浪し、成功をつかみ、失敗し、結婚と離婚を繰り返し、酒に溺れ、自傷行為をし、癌を2度経験してきた著者を、ものを書くことが救ったのだという。果たして今後、どのような著作が出てくるのかは予測できないが、著者にとってそこに大きな意味があったことは事実だろう。
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『不死身の花
――夜の街を生き抜いた元ストリート・チルドレンの私』
生島マリカ 著
新潮社
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。書評家、ライター。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、多方面で活躍中。
印南敦史(書評家、ライター)
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