北朝鮮ミサイル発射――春節への冷や水を浴びた中国
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月8日 17時0分
追い詰められた中国政府は、今では矛先をアメリカに向けようとしている。
世界のほとんどの国は、北朝鮮問題で「カギを握るのは中国」とみなしているが、中国は「なぜ我が国ばかりが?」と不満を持ち、これからは「米朝関係がカギを握る」という方向に持っていこうとする傾向にある。
それが冒頭に述べた「観察者網」の「朝鮮は春節ごろに長距離弾道ミサイルを発射するらしい 王毅がめずらしく厳しい言葉」に書いてある王毅外相の「目下のカギを握っているのは、米朝双方の決断なのである」という言葉なのだ。
事実上の弾道ミサイル発射を中国の春節連休に当ててくる北朝鮮に対し、もはや「切れてしまい」ながらもなお、北朝鮮を切り捨てることができないのが中国の現状と言えようか。中国は今、国連安保理による制裁決議に賛同した場合のシミュレーションを行いながら苦悩している。
北朝鮮を追い詰め過ぎれば、もっと暴走する。そのときに北が武力を行使した時、中国は中朝軍事同盟に縛られて北朝鮮の側に付くのか。その場合はアメリカと戦うことになり、必ず敗北する。したがって、この道は選ばない。それならアメリカ側に付いて北朝鮮を滅ぼすようなことができるのか。ロシアがそれを許さないだろう。いずれにしても第三次世界大戦になる可能性を秘めている。したがって中国としては北朝鮮をそこまで追い詰めるのは危険だと思っているのである。
シミュレーションは正解を見つけることができないまま、中朝首脳会談を交換条件として北を六か国協議の椅子に着かせるかなどを模索している模様だ。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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