だから台湾人は中国人と間違えられたくない
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月9日 16時25分
政府と警察、合弁パートナーが結託して逮捕・拘禁
こうしたトラブルは、絶え間なく発生してきた。
振り返れば、1979年、当時の最高実力者・鄧小平が「経済改革・開放政策」を打ち出して以来、中国は世界各国へ向けて対中投資を呼びかけ、積極的に外資導入に力を注いできた。90年代に入って経済成長が軌道に乗ると、台湾へもラブコールを送るようになった。1997年の「香港返還」でイギリスから香港を取り戻し、アヘン戦争以来の「百年の大計」を達成したことで、次の目標を台湾へと見定めたからだろう。
中国と台湾の雪解けとなったのは、2008年5月、台湾で国民党の馬英九が総統選挙に勝って政権を獲得し、中台関係の改善に乗り出したときだ。馬英九が、李登輝政権時代から15年間奮闘してきた国連加盟を目指す運動をやめ、陳水扁前政権が拒否した中国のパンダ受け入れにも応じたため、台湾では一躍パンダブームが起こり、中国への関心と親しみを感じるようになった。
中国では、国務院台湾事務弁公室に「政党部」を新設して対話姿勢を打ち出し、1949年以来断絶していた国民党と共産党のトップ会談が実現した。今後は年2回のペースで定期的にトップ会談をするということも決定。
トップ会談から7か月後の2008年12月には中台間に定期直航便が就航し、中国大陸から初めて台湾に観光客が訪れた。文化、芸術、メディア、その他各分野で幅広い交流が開始され、中国企業の台湾投資、台湾企業の中国投資も始まって、中台交流は怒涛の勢いで広がった。
だが、世界中の大企業が鳴り物入りで対中投資に邁進する華やかな舞台の陰で、台湾企業に対する中国の対応は驚くべきものだった。
当初は歓迎ムードの中で、中国は合弁事業を盛んに推奨し、台湾企業に対する税制の優遇措置や各種法的手続きの簡素化を約束した。台湾企業も中国進出にあたり、中国語が通じる相手との合弁事業は意思疎通の面でも問題なさそうだと判断した。やがて台湾の中小企業の企業家たちが福建省や広東省を中心に、中台合弁事業、次いで台湾の独資(全額投資)事業を次々に立ち上げた。
だが、合弁企業が操業を開始してようやく利益を上げるようになると、状況は一変した。ある日突然、地元の警察がやって来て、脱税や各種違法行為などを口実に、台湾の企業家を逮捕・拘禁。そして合弁パートナーである中国企業に所有権を移すようサインを強要したのである。サインしなければ何か月でも勾留すると恫喝され、サインをすれば会社を失って国外退去にされるのだ。
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