だから台湾人は中国人と間違えられたくない
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月9日 16時25分
こうした区分があるゆえに、「中国人」は海外へ出て、「同胞」から「華僑」、「華人」へと身分を変えて身の安全を図ろうとする。外国籍を取得して「華人」となり、他国の保護を得られるパスポートを所持して中国へ戻れば、安心してビジネスに専念できると考えるからだ。
もっとも、2014年11月に中国で「反スパイ法」が発足して以来、日本人を含めた多くの外国人が容赦なく逮捕・拘禁されるようになった。これまでのように国外退去処分では済まされず、中国国内の刑罰を受ける可能性が高くなった。今や経済成長を果たした中国が、政権維持と権力強化を目指して、地球規模で威力を増大しているということなのか。
台湾では、先月実施された総統選挙で、台湾の「自由」と「民主」を政策に盛り込んだ民進党が圧勝した。若い世代を中心に「台湾人」意識が盛り上がり、民進党に新たな未来を託した証である。それはまた、時々刻々と迫りくる中国政府の脅威に戸惑い、恐れつつも、反発する強い心の現れでもあるはずだ。今後、中国の脅威がさらに強まれば、きっと「台湾人」意識は一層強固なものになっていくにちがいない。
春節の季節に、日本の観光地を無言で静かに歩いているアジア人を見かけたら、台湾からの観光客かもしれない。先日発生した台湾南部地震の被害も深刻だ。政治も地震も両方の意味で、「応援していますよ!」と、日本語で声をかけてみるのも良さそうだ。
[執筆者]
譚璐美(タン・ロミ)
作家、慶應義塾大学文学部訪問教授。東京生まれ、慶應義塾大学卒業、ニューヨーク在住。日中近代史を主なテーマに、国際政治、経済、文化など幅広く執筆。著書に『中国共産党を作った13人』、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(ともに新潮社)、『中国共産党 葬られた歴史』(文春新書)、『江青に妬まれた女――ファーストレディ王光美の人生』(NHK出版)、『ザッツ・ア・グッド・クエッション!――日米中、笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、その他多数。
譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)
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