習総書記「核心化」は軍事大改革のため――日本の報道に見るまちがい
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月10日 17時0分
しかし、これが慣わしになってしまい、正常化された胡錦濤政権時代になっても、「核心」という言葉を胡錦濤国家主席(中共中央総書記)に対して使っている。
その証拠というか、例をお示ししよう。
たとえば、2010年4月21日に、中国政府の通信社「新華社」の電子版「新華網」の記事「胡錦濤総書記を核心とする党中央の地震救済実録」は、まさに「胡錦濤総書記を核心とする」と明記してある。
また、2011年06月23日の中華人民共和国工業・信息(情報)化部(MIIT)のウェブサイトは、「胡錦濤同志を核心とする指導集団(領導集体)」というタイトルの情報を報道している。中央テレビ局CCTVではかつて「以胡錦濤総書記為核心的」(胡錦濤総書記を核心とした)という言い方を慣例のように使っており、筆者の耳にも「音」として残っている。
集団指導体制は1927年から始まっている
日本のメディアや一部の中国研究者は、「集団指導体制」が胡錦濤政権時代から始まったというニュアンスで書いている。
これはひょっとしたら、筆者が『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』で、胡錦濤政権を例にとって「集団指導体制」とは何かをしつこく説明したせいかもしれないと、申し訳ないと思うと同時に、責任を感じてしまうので解説する。
集団指導体制は、1927年4月27日から5月9日まで(湖北省の)武昌で開催された中国共産党第五回全国代表大会で中国共産党中央委員会(中共中央)政治局常務委員会が発足し、6月1日に党規約に明記されたときから始まっている。
きっかけは同年4月12日に「四・一二反革命政変」と中共側が呼ぶ事件が起きたからだ。
日本では一般に「上海クーデター」と呼ばれているもので、中共勢力が政権を奪取しようとしていることに気がついた蒋介石が行なった武力弾圧である。これにより惨敗した中共側は全国を統一的に統治すべく、意思決定のメカニズムを構成し、党の強化を図った。
7月に、モスクワにあるコミンテルン執行委員会の指示により、「5人」の政治局常務委員を決定し、「多数決議決による集団指導体制」を誕生させた。
1928年6月18日から7月11日までモスクワで開催した第六回党大会でも、やはり「5人」の政治局常務委員が選出されている。
「5人」という奇数であったのは、多数決議決の際に意見が半々に割れるのを避けるためである。
これは胡錦濤政権時代の「チャイナ・ナイン」(9人)と、習近平政権の「チャイナ・セブン」(7人)と同じ構造であり、同じ理由から「奇数」なのである。
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