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シェアリングエコノミーで人をつなぐ、オランダ発のコワーキング

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月12日 11時55分

打って変わって真っ白の壁のミーティングルームには、「SSSSSHHHH」の文字が。静かに作業を進めるのにもってこいの部屋だ。

歴史を感じさせるレンガの壁が特徴のアムステルダムのS2Mは、もともとは1911年に証券取引所として建てられたものだ。

クリエイティブな個人と大企業をつなぐ架け橋

 とはいえ、それ以外が無料であることに、改めて驚くべきなのかもしれない。コーヒーは無料。コーラなどソフトドリンクやスナック類は値段が決まっておらず、自分が正当だと思う金額をそこに置かれたボトルに入れていく。

 このユニークなシステムをつくり出したのは、共同経営者のマリエル・セイハース氏とファン・デル・ホフ氏の2人だ。10年前、彼らは貸会議室業を営んでいたが、「とても古くさい業界で、何か新しいことを始めたかった」とセイハース氏。そんな矢先に、市場の変化に気づいた。

「企業の規模が小さくなり、経済危機で景気が低迷すると、アントレプレナーが行動を起こすようになりました。テクノロジーの向上で個人が1対1の直接取引を仕掛けることも簡単に。しかし、企業と違い個人のワーカーはマーケティングが難しい。そこで、自分のナレッジをオープンにし、シェアしあう、というアイデアを思いついたんです。これなら個人のワーカーが、自分の社会資本を必要とする誰かを発見できる」(ファン・デル・ホフ氏)

 蓋を開けてみれば、企業にとってもS2Mはすぐれたリサーチの場となった。クリエイティブな個人を取り込み、イノベーションを起こしたいと願う企業は、S2Mにやってくればいい。個人のワーカーの側もそれは好都合。営業活動なしで企業とのパイプをつくり、ビジネスチャンスを手にできるかもしれない。

 そして、企業と個人がつながり始めればS2M側にも新たな利益が生まれる。それまで無料のコワーキングスペースで仕事をしていたワーカーが、有料のミーティングルームのオフィスの使用機会を増やしていくからだ。無料のコワーキングスペースを事業のコアに据えながら、個人、企業、S2Mすべてが恩恵を受けられる環境が、ここにはある。

 ロッテルダム・スクール・オブ・ビジネスが行ったS2Mのユーザーアンケートでは、「2週間で新しいプロジェクトが始まった」「フリーランスの仕事が増えた」といった声が寄せられた。オープンして8年で77拠点。「才能ある人に出会いたければ、S2Mに行けばいい」。今や、そんなトレンドまで噂されている。

(左上)ユトレヒトS2M内にあるカフェ。セイハース氏もよく利用しているという。(右上)左)コ・ファウンダー/ディレクターのマリエル・セイハース、右)コ・ファウンダーのロナルド・ファン・デル・ホフ(下)生活者の利用が多い図書館内にあるため、ユトレヒトともアムステルダムとも違う、リビングのような落ち着いたモダンな雰囲気になっている。

創業:2006年
従業員:10人
拠点数:国内77カ所、海外11カ所
https://www.seats2meet.com

コンサルティング(ワークスタイル):In-house
インテリア設計:Bart Vos, Vos Interiors Groningen
建築設計:Bart Vos, Vos Interiors Groningen

WORKSIGHT 07(2015.4)より

※当記事はWORKSIGHTの提供記事です




WORKSIGHT


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