燃料電池車はテスラに勝てるか
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月15日 16時45分
地球温暖化の一因となっている二酸化炭素(CO2)の排出をゼロに近づけようと思えば、避けて通れないのは、ガソリンなどの化石燃料を使う自動車からの脱却だ。
これまでその転換の主役として脚光を浴びてきたのは、電気自動車(EV)だった。テスラモーターズのモデルS、ゼネラル・モーターズ(GM)のシボレー・ボルト、日産自動車のリーフなどである。
【参考記事】「環境に優しい」はウソ? 中国の電気自動車、発電の元は石炭から
しかし、これとは別の技術に期待を寄せる自動車メーカーも現れている。そのテクノロジーとは、燃料電池車(FCV)。燃料電池で水素と空気中の酸素を化学反応させ、それによってつくり出した電気で走る自動車のことだ。
補給する必要があるのは、水素だけ。ガソリンはまったく使用しない。1度の水素補給で走れる距離は、EVが1度の充電で走れる距離より長い。有害なガスを排出するガソリンエンジン車と異なり、吐き出すのは水蒸気だけだ。
【参考記事】水素燃料電池車の時代は本当に来るか
開発競争も熱を帯びている。昨年の東京モーターショーでは、トヨタのレクサスブランドがFCVのコンセプトモデル「LF-FC」を、ドイツのメルセデス・ベンツがコンセプトカー「ビジョン・トウキョウ」(燃料電池と電気の両方で動くミニバン)を出展。ホンダは、新型FCV「クラリティ・フューエル・セル」の市販予定車をお披露目した(3月に日本でリース販売を開始する予定)。
トヨタは既に、14年12月に日本でFCV「MIRAI(ミライ)」を発売し、昨年秋には北米とヨーロッパでも販売を開始している。世界初の大量生産のFCVという触れ込みの車だ。日本での発売開始から1カ月間の受注台数は、国内年間販売計画の400台を大きく上回り、1500台に達した。納車まで2~3年待ちのケースもある。
ただし、FCVが利便性を発揮するためには、水素ステーションがドライバーの身近になくてはならない。現在アメリカ国内にあるステーションは、たった十数カ所。そのほとんどがカリフォルニア州、それもロサンゼルスの周辺に集中している。しかも、一般のドライバーが利用できるのは数カ所だけだ。
日本が普及の先頭を走る
それでも整備は進んでいる。カリフォルニア州エネルギー委員会は莫大な予算を確保して、水素ステーションの建設を推進。委員会が目指す100カ所には遠く及ばないが、今年末までには州内のステーションがおよそ50カ所まで増える見通しだ。コネティカット州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州の知事も、FCVの普及支援を打ち出した。
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