テロ捜査の地裁命令にアップルが抵抗する理由 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月18日 16時10分
アップルのティム・クックCEOは同社のウェブサイトに「An important message to our customers」という声明を発表し、「政府はアップルに対して、ユーザーのセキュリティを脅かす措置を取るように要求している」、「我々はこの命令に反対する。この事例をはるかに超えた影響が発生するおそれがあるからだ」と述べています。あわせて、国内外のユーザーに対して広範な議論を提起したいとしています。
もちろん、クックCEOとしては「この事件に関しては、これまでも十分な捜査協力をしてきたし、自分たちにはテロリストに味方するという意図はまったくない」ということはハッキリさせての上です。
クックCEOが特に強調しているのは「iPhoneへのバックドア(セキュリティを破って不正侵入するための裏口)を作るように要請」がされている点で、これは「危険」だと強く訴えています。「FBIや裁判所は、この事件に関する、そしてこの1台のiPhoneにアクセスするためだけの措置」としていますが、アップルは「それでは済まない」というのです。
専門家によれば「このバックドアというのは、一旦コードが書かれてしまえば、それが悪用される危険性は巨大」だというのです。セキュリティの関係者の中には、ピンポイントの目的であっても「伝染性のある強毒性の生物兵器の株を使用することで、パンデミックの危険が発生するのと一緒」という声もあるそうです。
【参考記事】カギも番号も要らない「指紋認証」の南京錠
一見すると、FBIのことをアップルは信じていないようにも聞こえます。ですが、他でもないエドワード・スノーデンが「CIAやNSA」に「民間人SEとして派遣」されていたように、FBIのIT環境のセキュリティのレベルを信じろというのは難しいわけです。
アップルの立場からすれば、現在のiOSというのは、単にコミュニケーションやウェブサーフィンの道具だけではなく、「Apple Pay」を使った非接触式の金融取引デバイス化が急速に普及しています。そして「Apple Watch」という腕時計型のデバイスを通じて、心拍数やエクササイズ記録の管理から将来的には血圧などのメディカル情報も扱うという「高度なプライバシー情報のマネジメント」を担うような開発も同時に進められているわけです。
この戦略においては「政府の要請にも全面的には屈しない」というセキュリティの強さが、そのまま信頼につながるし、一旦その信頼が崩れたら、同社の今後のサービス提供計画のロードマップだけでなく、これからの人類におけるITの利便性も犠牲になってくる、そのぐらいの覚悟が背景にあると考えられます。
この記事に関連するニュース
ランキング
-
1仏英、ウクライナへの部隊派遣を検討か トランプ米政権視野に浮上 仏紙報道
産経ニュース / 2024年11月26日 10時39分
-
2ロシア使用の北朝鮮製弾道ミサイルに“欧米や日本の部品” ウクライナ国防省が明らかに
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月26日 7時59分
-
3ウクライナ、米国供与の長射程ミサイル「ATACMS」で攻撃か
読売新聞 / 2024年11月26日 10時57分
-
4セルビアの文化財の時計塔に中国語の落書き!中国ネット「恥ずかしい」「中国人とは限らない」
Record China / 2024年11月26日 13時0分
-
5ヒズボラの拠点25カ所を空爆 イスラエル軍「攻撃継続」
共同通信 / 2024年11月26日 10時43分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください