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テロ捜査の地裁命令にアップルが抵抗する理由 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月18日 16時10分

 また、仮にFBIと連邦地裁の命令に屈したとすると、例えば他国、それこそ中国やロシアの政府の命令に対して拒否することも難しくなるのだというのです。また、仮に今回の令状による命令が「判例化」してしまうと、アップルだけでなく、同業他社にも「一般論として政府にバックドアを提供する」ことが強制できることになります。この点に関しては、業界全体に強い警戒感があります。

 この問題は現在進行中の大統領選にも影響が出ています。例えば共和党のドナルド・トランプ候補は、アップルが声明を出した直後にコメントして「(アップルは)何様だと思っているんだ。裁判所の命令には従え」と吠えていましたし、共和党の候補の中では、すでに選挙戦から撤退したランド・ポール上院議員(リバタリアンの立場から個人のプライバシーへの政府の介入には反対)以外は、裁判所支持でまとまっているようです。

 一方で、民主党は割れており、下院議員の中にはアップル支持が多い一方で、上院の重鎮たち(例えばダイアン・ファインスタイン議員)は裁判所の命令を支持しています。ヒラリー・クリントン候補は、これまでの発言を総合するとファインスタイン議員の立場に近いはずですが、そう言明してしまうと「ただでさえ反発を受けている」若者票が完全に逃げてしまうので困っているようです。

 グーグルのピチャイCEOは17日に、アップルの姿勢に賛同するとツイートしていますが、その中で「この重要な問題については、思慮深く、そしてオープンな議論を期待したい」というメッセージを発信しています。賛否両論のある中で、広範な議論が持たれることを期待したいと思います。

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